研究課題/領域番号 |
23K10906
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
大西 正俊 福山大学, 薬学部, 准教授 (70587071)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 脳出血 / 抑うつ / キヌレニン経路 |
研究実績の概要 |
我々はこれまで、脳出血後にindoleamine 2, 3-dioxygenaseとkynurenine 3-monooxygenase (KMO)が上昇し、そのことによってキヌレニン経路の中間産物であるキノリン酸(NMDA受容体アゴニスト)/キヌレン酸(同アンタゴニスト)比が変動することが神経障害の惹起に関与している可能性を示してきた。本研究において、KMOは少なくとも神経細胞、ミクログリア、および、アストロサイトのいずれにも発現していたが、脳出血時においては、遊離キノリン酸の上昇にミクログリアのKMOがほぼ100%の寄与をすることを明らかにした。したがって、脳出血後のNMDA刺激系の上昇にはミクログリアが主たる役割を果たしていると考えられ、これが脳出血後遺症に伴う抑うつ発症に関連しているとすると、ミクログリアを抑制するような薬物が抗うつ効果を示す以前の報告と一致する。脳出血後遺症に伴う抑うつについて、in vivoマウス脳出血モデルにおいては、脳出血のみでは抑うつ行動を示さなかったが、尾懸垂を繰り返すことによって、コントロール群よりも強い抑うつ行動を示した。つまり、脳出血は、それだけで抑うつを発症するわけではなく、ストレス耐性を低下させることが示された。このbehaviourに対し、KMO阻害薬であるRo61-8048は、単回投与で持続的な抗うつ効果の傾向を示した。これは、NMDA受容体遮断薬であるケタミンの抗うつ効果と類似している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vivo脳出血モデルにおける抑うつ行動の評価系が確立され、それに対して、KMO阻害薬であるRo61-8048が抗うつ効果の傾向を示した。再現性等、課題は残るが、2年目にはおおむね順調にメカニズムの解析に移ることができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、脳出血によるストレス耐性の低下に対してKMO阻害薬であるRo61-8048が抗うつ効果を示すか再現性を取得し、そのメカニズムを解析する。具体的には、Ro61-8048の抗うつ効果がAMPA受容体遮断薬であるNBQXによってどのような影響を受けるか調べる。ケタミンの抗うつ効果は、NBQXによって消失することが報告されている。また、NBQXを投与した際の前頭前野におけるmTORのリン酸化についてウエスタンブロッティングにて検討する。順調に進展した場合は、Ro61-8048の依存性の有無について、条件付け場所嗜好性試験により検討する。ケタミンの依存性は深刻な欠点であるが、それがクリアできれば大きな意義がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会旅費について別の予算から支出することができたため、わずかに次年度使用額が生じた。繰越額は消耗品費として使用する計画である。
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