研究実績の概要 |
慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常CKD-MBDでは、リン、ビタミンDなど疾患特異的な栄養代謝変化を考慮した新たな栄養管理法の開発が、病態の進展だけでなく合併症・重症化の予防にきわめて重要である。本研究では、リン・ビタミンD代謝制御機構の解明を行い、CKD-MBDを予防する新しい栄養管理法の確立を目的としている。本年度は、炎症時におけるリン・ビタミンD代謝の変動を明らかにするためリポ多糖(LPS)およびTNF-α を用いビタミンD 代謝関連遺伝子の発現変動を解析した。C57BL/6JマウスにLPS(E.coli 055B5; 2~20 mg/kg)を腹腔内投与した。その結果、血中リンおよびintact PTH 値は、LPS 用量および時間依存的に増加した。血中intact FGF23値は、LPS投与後3時間のみで増加し、C末端FGF23断片の血中レベルは、LPS投与1.5~9時間で著しく増加した。血中1,25(OH)2D濃度は、LPS投与では変化しなかったが、TNF-α投与において有意に上昇した。さらに定量PCR解析の結果、TNF-αにより腎臓のビタミンD合成酵素CYP27B1 mRNA発現が増加し、ビタミンD 異化酵素CYP24A1 mRNA発現が減少した。以上の結果から、急性の炎症状態においては、血中PTH、FGF23、1,25(OH)2D、リン濃度の変化が生じることが明らかになった。また、炎症状態は、腎外組織における1,25(OH)2D の産生だけでなく、腎臓の1,25(OH)2D 産生を亢進させ血中濃度を変化させることが示唆された。今後は高リン血症を呈する腎不全モデルマウスを用いて炎症因子が及ぼすリン・ビタミンD代謝変動について明らかにする予定である。
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