研究課題/領域番号 |
23K10958
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
臼田 春樹 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 講師 (30707667)
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研究分担者 |
和田 孝一郎 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (90263467)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 大腸炎 / 食物繊維 / 短鎖脂肪酸 |
研究実績の概要 |
8週齢の雄性C57BL6Nマウスに普通食(ND)または食物繊維欠損食(FF)を給餌した。給餌と同時に大腸炎誘発試薬であるデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を、2%(w/v)の濃度で蒸留水に溶解した水溶液または蒸留水のみを5日間自由飲水させた。その間、腸炎の重症度を評価するマクロな指標として、体重の減少度と下痢および血便を評価した。その後、マウスを解剖し、大腸の病理組織の評価、myeloperoxidase(MPO)活性の測定および各種サイトカインの測定を行った。NDまたはFFを給餌し、DSS負荷を行わなかった群ではいずれも体重減少は起こらず、下痢や血便も生じなかった。病理組織も正常であり、MPO活性の増加も認められなかった。一方、ND+DSS負荷群では体重減少や下痢は認められなかったが、負荷4日目から5日目にかけて軽度な血便が生じた。大腸病理組織の評価では軽度な免疫細胞の浸潤と表皮の若干の崩れが認められた。また、MPO活性も増加した。これに対し、FF+DSS負荷群では負荷1日目から下痢が認められ、程度が軽度に回復しながら5日まで継続した。血便は3日後から認められ始め、程度を増悪しながら5日目まで継続した。病理組織評価では表皮を中心に大腸柔毛の著しい破壊とND+DSS群よりも重度のMPO活性の増加が認められた。また、DSSの負荷の有無にかかわらず盲腸内容物中の短鎖脂肪酸の量はFF給餌を行った群で減少した。さらに、これらの群では盲腸そのものの重量も減少しており、糞便中の短鎖脂肪酸の絶対量が減少していることが推察された。 以上の結果から、食物繊維の欠損はDSSによるマウスの腸炎を増悪し、その変化は糞便中の短鎖脂肪酸量と関連することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初の計画通りにすすんでいる。糞便サンプルは既に採取しているので次世代シーケンサーによる検討は一度に行った方が費用が抑えられ、解析結果の解釈もより妥当性があるため、他の実験の進捗と合わせてよいと判断されるときに行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
食物繊維欠損食が肝臓へ及ぼす影響を検討しつつ、本年度の検討の続きとして大腸炎悪化がいつ生じるのかに加え、腸内細菌の解析や短鎖脂肪酸による腸炎のレスキュー実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
検討が予想よりも順調に進み、使用する動物数や試薬に余裕が出たため
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