• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

神経活動データ解析手法の数理基盤整備

研究課題

研究課題/領域番号 23K10978
研究機関茨城大学

研究代表者

竹田 晃人  茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (70397040)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2028-03-31
キーワード神経活動データ解析 / ベイズ統計学 / 大規模データ解析
研究実績の概要

本年度の主な成果は以下のとおりである。
(1) 連続値を持つ時系列信号に対する神経集団推定法:先行研究で提案されたマルコフ連鎖モンテカルロ法とディリクレ過程を融合させた神経集団推定法は、2値化された時系列信号に対するものだった。そこで研究代表者らは、カルシウムイメージングデータ等の連続値データに適用可能なように一般化した手法をこれまでの研究で提案していたが、本提案手法に関する研究成果が学術誌に掲載された。加えて本成果を国際会議でも公表し関連分野の研究者に周知した。
(2) 確率的クラスタリングの手法の収束性と収束解の性質の解明:(1)の連続値データに対するクラスタリング手法の解探索空間は先行研究の手法よりも広く、収束解の性質には未解明な点が多かった。そこでアルゴリズムを拡散過程で記述し収束解の性質を理論的に予測する手法を考案した。本成果は研究代表者が指導していた学生が博士論文として公表したが、今後学会等での公表も計画している。
(3) 機能的磁気共鳴画像法(fMRI)のデータからの特徴量抽出に関するスパース行列分解の有効性:fMRIデータから特徴量を抽出する際にスパース性を含む行列分解アルゴリズムが有効であることをこれまでの研究で指摘していたが、本研究成果をまとめた論文が学術誌に掲載された。
(4) スパース性を含む独立成分分析の新規アルゴリズムの開発:(3)に関連し、スパース性を含む独立成分分析の新たなアルゴリズムを構成し、かつ提案したアルゴリズムがfMRIデータからの特徴量抽出に有効であることを示した。本成果は学術誌に論文を投稿しており、かつ国際会議および国内学会でも公表している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績概要で述べた通り、本研究課題に取り組むにあたり先行実施していた複数の研究成果が学術誌上に掲載されている。加えて、研究成果については多数の国際会議や国内学会等で公表しており、関連分野の研究者にも広く周知している。
本研究課題開始後の新たな研究成果に関しても、fMRIデータ解析手法の開発を中心に得られており、研究対象の新規開拓の観点からも大きな問題はない。
なお現在の研究実施体制として、研究代表者および学外の研究者(研究代表者の主宰研究室に以前所属していた研究者が中心)とで進めている状況である。今のところ実施体制に問題はないが、必要に応じて関連分野の他の学外研究者、および研究代表者が主宰する研究室の学生にも協力を依頼するつもりである。
以上より、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

今後は以下の課題に重点的に取り組む予定である。
(1) 実データに対する神経集団推定法の構築:これまでの研究で、カルシウムイメージングデータ等の連続値データに適用可能な一般化された神経集団推定法を開発しているが、実データに対する有用性がまだ確立されていない。なお実データ解析のためには、神経集団推定に用いられるベイズ推定モデルの改良が必要なことがこれまでの研究で判明している。そこで、どのような推定モデルが実データの解析に適しているか、開発手法の実データへの適用により知見を蓄えることで、最適な推定モデルの構成を試みる。
(2) 独立成分分析を始めとする行列分解アルゴリズムの性能評価法の開発:これまでの研究でスパース性を含む独立成分分析の新たなアルゴリズムを提案しているが、その性能に関する理論的評価は十分に行われていない。そこで統計力学の自由エネルギー形式を利用し、独立成分分析を始めとする行列分解アルゴリズムの性能を解析する手法の開発を試みる。
(3) 多数のハイパーパラメータに対するベイズ最適化問題の効率的な解探索法の構築:本研究課題に先行する研究として、研究代表者らはカルシウムイメージング画像中の神経細胞の位置および活動強度を推定する手法の開発に取り組んできた。この手法はカルシウムイメージング動画像から神経細胞の活動信号を高精度で抽出する際に重要となるが、多数のハイパーパラメータの推定を効率よく行う必要がある。これまでの研究ではStein変分最急降下法を用いて高速推定を行う方法を模索していたが、この方法に限らずより効率的にハイパーパラメータ推定を行う方法を探ることで、高速推定手法の開発を目指す。

次年度使用額が生じた理由

本研究課題と別に実施していた研究課題 (基盤研究(C),18K11175) について、コロナ禍を理由とした研究期間の1年延長が認められていた。別研究課題の助成金も基金扱いであり次年度使用額(本年度への繰越額)があったが、研究成果として両研究課題に含まれるものについては、必要経費を最終年度である別研究課題から主に支出することになった。従って本研究課題については次年度使用額が大きく生じることになった。
次年度使用額については、研究発表のための旅費、老朽化した研究設備の更新、研究に必要なソフトウェアの更新費、研究協力に対しての謝金、論文掲載料等で主に使用する予定である。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Performance Evaluation of Matrix Factorization for fMRI Data2023

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Endo, Koujin Takeda
    • 雑誌名

      Neural Computation

      巻: 36 ページ: 128-150

    • DOI

      10.1162/neco_a_01628

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Generalization of generative model for neuronal ensemble inference method2023

    • 著者名/発表者名
      Shun Kimura, Koujin Takeda
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 18 ページ: e0287708

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0287708

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Automatic Hyperparameter Tuning in Sparse Matrix Factorization2023

    • 著者名/発表者名
      Ryota Kawasumi, Koujin Takeda
    • 雑誌名

      Neural Computation

      巻: 35 ページ: 1086-1099

    • DOI

      10.1162/neco_a_01581

    • 査読あり
  • [学会発表] L1正則化付きICAの理論的性能評価2024

    • 著者名/発表者名
      遠藤優介,竹田晃人
    • 学会等名
      日本物理学会春季大会
  • [学会発表] 時間差分を考慮した活動同期性に基づく機能的神経クラスタ推定2024

    • 著者名/発表者名
      木村俊,竹田晃人
    • 学会等名
      日本物理学会春季大会
  • [学会発表] 新たな疎制約付きICAの提案と収束性の評価2024

    • 著者名/発表者名
      遠藤優介,竹田晃人
    • 学会等名
      電子情報通信学会総合大会
  • [学会発表] Application of sparse ICA to fMRI data and performance analysis based on statistical mechanical method2023

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Endo, Koujin Takeda
    • 学会等名
      International Conference on Machine Learning Physics
    • 国際学会
  • [学会発表] スパース制約を課した新たな ICA とタスク付き fMRI データ解析への応用2023

    • 著者名/発表者名
      遠藤優介,竹田晃人
    • 学会等名
      日本生物物理学会年会
  • [学会発表] 線虫の全脳活動データに対する機能的神経クラスタ推定2023

    • 著者名/発表者名
      竹下晴山,木村俊,竹田晃人,岩崎唯史
    • 学会等名
      日本生物物理学会年会
  • [学会発表] 疎行列分解におけるパラメータ自動調整法の提案と有効性の検証2023

    • 著者名/発表者名
      川澄亮太,竹田晃人
    • 学会等名
      情報論的学習理論ワークショップ(IBIS2023)
  • [学会発表] 神経活動データに対するスパース独立成分分析の適用と統計力学的手法に基づく性能解析2023

    • 著者名/発表者名
      遠藤優介,竹田晃人
    • 学会等名
      情報論的学習理論ワークショップ(IBIS2023)
  • [学会発表] 確率的ブロックモデルに基づく時系列信号クラスタ推定2023

    • 著者名/発表者名
      木村俊,竹下晴山,岩崎唯史,竹田晃人
    • 学会等名
      情報論的学習理論ワークショップ(IBIS2023)
  • [学会発表] 活動同期性に基づく確率的ブロックモデルによる神経クラスタ推定2023

    • 著者名/発表者名
      木村俊, 竹下晴山, 岩崎唯史, 竹田晃人
    • 学会等名
      日本物理学会年次大会
  • [学会発表] DCアルゴリズムを応用した正則化付きICAによるfMRIデータの解析2023

    • 著者名/発表者名
      遠藤優介, 竹田晃人
    • 学会等名
      日本物理学会年次大会
  • [学会発表] 新たな正則化付きICAとfMRIデータ解析への応用2023

    • 著者名/発表者名
      遠藤優介,竹田晃人
    • 学会等名
      日本神経回路学会全国大会
  • [学会発表] Time series data clustering by MCMC with Dirichlet process2023

    • 著者名/発表者名
      Shun Kimura, Koujin Takeda
    • 学会等名
      STATPHYS28
    • 国際学会
  • [学会発表] Analysis of matrix factorization by signal-noise separation in neural networks2023

    • 著者名/発表者名
      Tomoki Tamai, Ryota Kawasumi, Koujin Takeda
    • 学会等名
      STATPHYS28
    • 国際学会
  • [備考] 竹田 晃人 (研究代表者) のホームページ

    • URL

      http://takeda.ise.ibaraki.ac.jp/takeda/index.html

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi