研究課題/領域番号 |
23K10987
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岩本 宙造 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (60274495)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | 美術館定理 |
研究実績の概要 |
近年,テレワークの普及により,無線LANアクセスポイントが急速に増えている.そのため,複数の無線LANが,限られた周波数帯域を奪い合う電波干渉が問題になっている.本研究では,幾何学問題の一つとして扱われてきた美術館問題を複数の周波数帯域に拡張した多チャネル美術館問題を考察する.さらに,現実の建物や地形を考慮した実用的な美術館問題として,次の5テーマを挙げ,実社会の無線LAN環境の改善に役立つ美術館定理を証明する.(1)現実の建物(直交多角形)に対して,普段の生活で使われる矩形視界に基づく美術館問題.(2)同一周波数による混信を避けるため,複数帯域で館内をカバーする多チャネル美術館問題.(3)美術館の壁に複数の窓を設置し,窓からの採光で館内フロアを明るくする採光窓配置問題.(4)摩天楼ビルがそびえるマンハッタン島をビル上のカメラで警備するマンハッタン監視問題.(5)凹凸のある3次元地形(テライン)を,所有者の土地の中から警備するテライン監視問題.
本年度は,上記5テーマのうち,(3)の採光窓配置問題に焦点を当てて研究した.採光窓配置問題は,多角形の辺上に配置された移動警備員を用いて多角形内部全体をくまなく警備する美術館問題である.本研究では,頂点数nが小さい場合に対して,辺警備員数の十分条件を与えた.これは,美術館内部全体に自然光を取り入れるための窓数の十分条件を与えたものである.この結果は,2023年度電子情報通信学会連合大会の奨励賞を受賞している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は美術館定理に関する論文を含めて,合計4件の論文がジャーナルと国際会議に採択されている.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度以降は,矩形視界の美術館問題や多チャネル美術館問題,マンハッタン監視問題,テライン監視問題について研究を進める
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,2023年度において,パソコンとモニターの購入を科研費で予定していました.しかしその後.別個に情報科学部教育環境整備事業に採択され,この事業においてパソコンとモニターの購入に関する予算が確保されたため,科研費の予算を次年度以降の研究や必要経費に繰り越すことになりました. 旅費に関しては,航空運賃の高騰により,共著者を含めた二人分の旅費宿泊費が科研費でまかなえないことが判明しました.そのため,2023年度は国際会議への論文投稿を延期し,2024年度に2年分の旅費を合算して海外出張を実施する予定です. その他の経費に関しては,安価なパソコンパーツの購入のみを実施しました.
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