研究課題/領域番号 |
23K11015
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
寒水 孝司 東京理科大学, 工学部情報工学科, 教授 (80408723)
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研究分担者 |
五所 正彦 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70701019)
大東 智洋 筑波大学, 附属病院, 病院助教 (90980863)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 医薬品開発 / 臨床試験 / Bayes / 既存データ / リアルワールドデータ |
研究実績の概要 |
本研究では,医薬品開発を加速させるために,3つの状況(課題)のもとで,既存データを利用するBayes流の方法の評価と構築を目的としている.本年度の各課題の研究実績の概要は次の通りである. 課題(1) がんの2剤併用療法の第1相用量探索試験:がんの2剤併用療法の最適な用量組み合わせを決定する際に,既に実施された単剤療法の試験のデータ(既存データ)を利用できることがある.既存データを利用する複数の方法について,既存データと新規データの不均一性が試験デザインの性能(例:最適な用量組み合わせの選択割合)に与える影響を評価した.得られた研究成果を国際学会(2023年8月)でポスター発表した. 課題(2) 複数の主要評価変数を設定する臨床試験:既存データを利用して治療効果をBayes流に解析する方法(Quan et al., 2019)を2群比較臨床試験に適用できるように拡張した.その方法の動作特性を数値実験によって評価した. 課題(3) 複数の試験の既存データを利用する臨床試験:これまでに提案されている複数の試験の既存データを利用する方法では,既存データの特徴に応じて,新規データと不均一性の小さい既存データのみを利用することはできない.複数の既存データから,新規データと同じクラスターに属すると考えられる既存データを選定することと,治療効果のパラメータを推定することを同時に行う方法を構築した.その方法の動作特性を数値実験によって評価した.得られた研究成果を国内会議(2023年4月)と科研費シンポジウム(2024年1月)でそれぞれ口頭発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標をほぼ達成できた.初年度は情報収集と基礎的な検討を予定していたが,国際会議ポスター発表1件,国内会議口頭発表1件,科研費シンポジウム口頭発表1件という研究成果が得られた. 課題(1)については,これまでの研究成果を発展させる内容であったことから,早い段階で,国際会議ポスター発表1件という研究成果が得られた.これより,課題(1)の進捗は当初の予定をやや上回った. 課題(2)については,学内の卒業研究を通じて,基礎的な検討を終えたところである.当初の予定通りに研究が進捗している. 課題(3)については,予定を一部変更したが,当初の目的を達成できるデータ解析法を検討して,国内会議口頭発表1件と科研費シンポジウム口頭発表1件という研究成果が得られた.これより,課題(3)の進捗は当初の予定をやや上回った.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえて,各課題について,次のように研究を進める予定である. 課題(1)については,国際会議でポスター発表した内容を中心に,研究成果を学術論文としてまとめる. 課題(2)については,これまでの研究成果を国内外の会議で発表するとともに,学術論文としてまとめる.さらに,主要評価変数(以下,主要変数)が2値変数である状況について,これまでに構築した方法を発展させる.その上で,当初の研究目的として,1つまたは複数の主要変数の治療効果が大きければ,残りの主要変数の治療効果が小さいことを許容する考え方(Kavelaars et al., 2020)と既存データを利用して治療効果をBayes流に解析する方法(Quan et al., 2019)を融合した方法を構築する.本課題に関連して,2つの主要変数の関数関係を考慮した標本サイズ設計法を構築する. 課題(3)については,国内会議で口頭発表した内容を学術論文としてまとめる.その上で,複数の既存データについて,各データの利用量に関する統計量を構築して,当初の研究目的である既存データの利用量の上限の設定できるデータ解析法の構築を試みる. 2023年度に引き続き,研究課題ごとに,分担研究者,研究協力者,国内・海外の研究者との連携を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の配分額を次年度に繰り越すことになった.研究分担者が2024年度の配分額と合わせえて旅費と消耗品に使用する予定である.
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