研究課題/領域番号 |
23K11058
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
沢田 篤史 南山大学, 理工学部, 教授 (40273841)
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研究分担者 |
野呂 昌満 南山大学, 理工学部, 教授 (40189452)
張 漢明 南山大学, 理工学部, 教授 (90329756)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | サイバーフィジカルシステム設計 / ソフトウェアアーキテクチャ / IoT / 品質特性 / 機械学習モジュール / 開発方法論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,不確かな振舞いを示すモジュールがサイバーフィジカルシステムの品質特性に与える影響を明らかにし,高い品質を持つアプリケーション開発を支援する基盤を確立することである.本研究では,この目的を達成するために,次の三つの重点課題,すなわち,(a)機械学習モジュールの品質への影響の定式化とCPS設計方法論の検討,(b)機械学習モジュールがアーキテクチャ設計に与える影響の評価方法の検討,(c)機械学習モジュールを考慮した品質要求検証法の検討,を設定している. 2023年度においては,関連する先行研究の調査や資料収集を実施するとともに,サイバーフィジカルシステムやWebサービスシステムのソフトウェアアーキテクチャ設計において,機械学習モジュールが品質に及ぼす影響を,プロトタイプアプリケーションの構築を通じて検討した. 課題(a)および(b)では,自動運転アプリケーションにおける危険予測機能を機械学習モジュールを用いて実現する場合に,その振舞いや予測結果の不確かさを緩和するためのアーキテクチャ設計のあり方や,評価方法について検討を行った.危険予測のために複数の機械学習モジュールを用意し,互いに補完可能な構造を定義することで不確かさの緩和が可能になり,決定的な補完アルゴリズムを用意することで,品質への影響評価が可能になることが分かった. 課題(c)では,簡単な組込み機器が協調するIoTアプリケーションを題材に,機械学習モジュールの導入を視野に入れた設計方法論を検討するとともに,要求される品質と設計プロセスの間の関係の解明を試みた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重点研究項目として設定した(a)機械学習モジュールの品質への影響の定式化とCPS設計方法論の検討,(b)機械学習モジュールがアーキテクチャ設計に与える影響の評価方法の検討,(c)機械学習モジュールを考慮した品質要求検証法の検討について,以下,それぞれに進捗状況を評価する. 課題(a)と(b)では,関連研究の調査や資料収集を行うとともに,自動運転システムのための危険予測機能を題材に,アーキテクチャ設計と機械学習による予測の不確かさとの関係について検討し,振舞いの不確かを軽減するアーキテクチャ設計のための知見を得ることができた. 課題(c)では,関連研究の調査や資料収集を行うとともに,簡単なIoTアプリケーション事例を,課題(a),(b)で検討中の開発方法論に沿って開発する際に,機械学習モジュールの不確かな振舞いの影響を考慮した品質評価方法について検討した. 初年度は調査研究に重点を置く予定であったところではあるが,具体的な事例としてのアプリケーションを想定した検討ができたことから,研究の進捗はおおむね順調であると評価している.
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今後の研究の推進方策 |
研究の重点項目として設定した,(a)機械学習モジュールの品質への影響の定式化とCPS設計方法論の検討,(b)機械学習モジュールがアーキテクチャ設計に与える影響の評価方法の検討,(c)機械学習モジュールを考慮した品質要求検証法の検討,については今後も引き続き重点項目とする.初年度である2023年度においては調査研究も含めておおむね順調に進展していると評価できることから,引き続き先行研究の調査を行うとともに,課題(a),(b),(c)いずれについても,事例による検討をより広範囲のアプリケーションを対象に行う.また対象とする品質特性についても範囲を広げて検討する. これらを通じ,2023年度で行ったアプリケーション構築事例から得られた知見を,一般化するとともに形式化することで,研究目的である高品質なCPS構築のための工学的基盤の確立を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費について,研究の計画段階では,汎用組込みマイクロコンピュータボードやセンサの他,この研究に専従利用できるノートブック型PCを計上していた.物価高騰や半導体不足などの影響を受け,これらの機器が当初見積もり額よりも高価となってしまうことが見込まれたので,研究代表者および分担者の機関に既存の機器で代替しながら,実機の代わりにシミュレーション等を用いて研究を実施した.これにより物品費の支出が少なくなったことから,次年度使用額が生じる結果となった. 2024年度および2025年度においては,2023年度に生じた次年度使用額を併せて,研究の遂行に必要なコンピュータ機器を購入し,実機を用いた検証などに利用する予定である.
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