研究課題/領域番号 |
23K11093
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研究機関 | 米子工業高等専門学校 |
研究代表者 |
徳光 政弘 (徳光政弘) 米子工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60713930)
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研究分担者 |
辻 正敏 香川高等専門学校, 電気情報工学科, 教授 (00455164)
中谷 淳 愛知工科大学, 工学部, 教授 (10413775)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | キューブサット / 超小型衛星 / 光無線 / オンボードコンピュータ / センサネットワーク / 組み込みシステム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、超小型衛星(特に10cm立方体サイズを基本とするキューブサット)を対象に、筐体内の機器間接続のハーネス削減と衛星筐体内の電子機器の電磁干渉低減ができる光無線通信を用いたセンサ・姿勢制御装置等を計測・制御するバス(光無線バスと呼ぶ)の開発である。人工衛星に搭載されている各種センサや姿勢制御装置、バッテリー等の監視・制御の機器間通信はハーネスで制御信号が伝送される。超小型衛星のキューブサットは衛星のサイズが小さいため、衛星に搭載する機器配置や筐体内のハーネス取り回しは設計上の重要な課題となる。 今年度は、パルスプラズマエンジン搭載の2Uサイズ(1Uは10cm立方体サイズ)のキューブサットである「KOSEN-3」を対象に、光無線バスのシステム構成の概念設計を実施した。KOSEN-3の筐体内部にセンサとマイコンを組み合わせた光無線バス用の回路基板を配置し、衛星に艤装できるかを検討した。検討では、光無線バスの回路基板同士が光無線通信ができるように機器配置を考慮した。光無線バスは無線通信ネットワークであることと、光無線バスのノード通信の冗長性を確保するため、直接通信モードと中継通信モードができる構成とした。無線回路基板にはマイコンとマイコンに接続するセンサ等への電源供給が必要なため、衛星の主電源基板から電源を供給を受ける設計とした。また、衛星への電力収支を検討し、衛星がミッションを実施するにあたって、光無線バス回路基板への電力割り当てを検討した。検討の結果、光無線バスの回路基板はKOSEN-3内部に6個前後の搭載可能であることを見込む。マイコンの選定については、KOSEN-3衛星に必要とされる機器間の制御データ通信速度、衛星で利用できる電力制約や回路基板に対する寸法制約から、マイコン計測で一般的なバスに対応し、光無線制御プログラムが搭載可能なチップを選定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では、光無線通信に必要な回路設計と試作を進める予定であったが、試作・検討が遅れている。光無線バスのシステム構成の検討にあたって、KOSEN-3衛星への光無線バスの搭載を検討の題材とすると同時に、実際のキューブサットの様々な事例を分析が不足していた。分析にあたっては、光無線バス回路基板に割り当て可能な電力や回路基板としての部品寸法、機器間通信に必要なデータ通信量・通信速度の精査が不足しているため、これらの点も含めて衛星設計の事例を分析する。センサから取得するデータ量や、姿勢制御装置等の制御データの通信量が多くなると、これに応じて通信制御用マイコンの処理速度に対する性能要求が高くなる。そのため通信制御用マイコンに対する今度は衛星の電力収支にも影響することから事例を精査しつつ、光無線バスの回路仕様・通信仕様を決定することにした。 また、光無線バスは、光無線通信をするノードによって構成される無線通信ネットワークとなるが、これに関するネットワークアーキテクチャ仕様の検討が不足している。ノード同士が直接・間接的に通信するモードを実現するための命令、ノード間通信に必要な命令、ノードの稼働状況確認のための命令、データフォーマット等を十分に検討できていない。通信制御用マイコンの仕様と合わせて検討を進める。
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今後の研究の推進方策 |
光無線通信に必要な回路設計と試作を進める。様々なキューブサットの設計事例を分析し、センサ・機器制御に必要な電気的な通信仕様を検討する。そして、光無線バスの無線通信回路基板を試作し、通信距離や通信速度を評価する。まずは、人工衛星に求められる信頼性の要求に応えるために、低速通信でバスとして動作するシステムを実現する。これには設計事例を分析し、多くの衛星で活用が見込める仕様となるように性能を整理する。回路基板の実現にあたっては、衛星に回路基板を搭載した状態でも光無線バスの制御マイコンのファームウェアの変更ができるように物理寸法にも注意して検討する。 光無線バスは、光無線通信をするノードによって構成される無線通信ネットワークとして動作するためのネットワークアーキテクチャ仕様を検討する。ノード同士が直接・間接的に通信するモードを実現するための命令、ノード間通信に必要な命令、ノードの稼働状況確認のための命令、データフォーマット等を衛星の設計事例を整理しつつ仕様の案を作成する。また、光無線バスのネットワークシステム構成として各ノード間の通信を中央ノードが制御する集中制御方式、各ノードによる自律型の分散制御方式の通信制御機構についても検討する。衛星の搭載機器によっては、計測や制御頻度が高いセンサや機器もあるため、自律的に通信制御が望ましいことも考えることができるため、両方の制御方式に対応できるようにプロトコルを策定する。 ネットワークアーキテクチャの仕様の検討を進めつつ、試作として光無線バスを実現するための通信制御用マイコンのプログラム開発を進める。光無線バスでの通信プロトコルをプログラムとして実装し、機器間通信の効率を評価する。また、試作した光無線バス回路基板は衛星の構体内部に組み込み、実際の通信環境に即した形で通信試験を実施し、評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費について、光無縁バスの回路基板を衛星のフライトモデル相当の構体に組み込んで評価実験をする予定であったが、CAD上での回路基板の配置検討に検討がとどまったため、助成金を次年度に繰り越した。次年度は、CADで設計した衛星の構体部品を機械加工専門の業者に外注する。そして、納品された衛星の構体部品を使って、衛星内部に光無縁バス回路基板を組み込んで通信実験をして評価する。
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