研究課題
R5年度の研究目的は、強い漏洩耐性と緊密な安全性を保証する耐量子認証鍵交換の一般構成と部品の十分条件の解明である。研究実施計画に基づき、①漏洩耐性を満たす認証鍵交換方式の設計と安全性証明、②耐量子安全性を満たす認証鍵交換方式の設計と安全性証明、に取り組んだ。①漏洩耐性を満たす認証鍵交換方式に関しては、2021年に国際会議で発表した長期秘密鍵と使い捨て乱数の漏洩耐性を保証する片側認証の一般構成について、ランダムオラクルモデルにおける効率の良い方式とその安全性証明を与えた。従来の標準モデルにおける方式に比べ、理想的な仮定を用いる代わりに通信量や計算量を削減できることを示した。また、一般構成の部品に求められる十分条件を明らかにした。②耐量子安全性を満たす認証鍵交換方式に関しては、同種写像問題に基づく効率の良いパスワードベース方式を提案した。2022年に初めての同種写像問題に基づくパスワードベース方式が提案されたが、パスワード長が長くなると通信量と計算量が増大するという問題があった。提案方式では、従来方式と計算量仮定を変えることなく、通信量を約半分、計算量を約4/5に削減することに成功した。漏洩耐性を満たす認証鍵交換方式については、国際論文誌(IEICE TRANSACTIONS on Fundamentals)に掲載され、公知化した。また、耐量子安全性を満たす認証鍵交換方式については、国際会議(ACISP 2023)で発表し、公知化した。
2: おおむね順調に進展している
実施計画に沿って、研究目的である強い漏洩耐性と緊密な安全性を保証する耐量子認証鍵交換の設計に必要な漏洩耐性と耐量子安全性を達成するための基礎となる方式を設計し知見を得ることができたため。
引き続き研究計画に沿って、認証鍵交換方式の設計と部品に要求される十分条件を満たす耐量子安全な要素技術の考案を進めていく。特に、緊密な安全性を満たす方式の構成に取り組む。前年度の成果である漏洩耐性を持つ方式と耐量子安全性を満たす方式の構成に用いたテクニックをうまく組み合わせられないか検討する。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: E106.A ページ: 1141~1163
10.1587/transfun.2022DMP0001