研究課題/領域番号 |
23K11125
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
中野 博生 兵庫県立大学, 理学研究科, 准教授 (00343418)
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研究分担者 |
轟木 義一 千葉工業大学, 創造工学部, 教授 (40409925)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 大規模並列計算 / 並列シミュレーション / 大規模疎行列 / 固有値問題 / スーパーコンピュータ / 計算物理 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、巨大次元の疎行列に対する固有値計算を高精度な並列シミュレーションで実現できるか、ということを目指している。その目標に対し、2023年度、「富岳」一般課題(2023年A期、重点分野として採択)hp230114「固有値問題のシミュレーションにおける超高並列化の限界への挑戦」の中で富岳でないと実施できない高プロセス並列の固有値問題数値シミュレーションを実施した。 MPI並列数が極めて大きい場合の計算ジョブの挙動に焦点を当て、富岳の計算ノードの約半分を一度に使うhugeクラスのジョブと共に、富岳の全系計算としての計算ジョブを様々な形で実施した。これらの計算ジョブにより、まずは、そもそもどのくらいまでMPI列数を大きくすることが可能なのか、その際にメモリの消費状況がどのように変化していくのか、ということに焦点を当てて検討し、これを明らかにした。高プロセス並列ジョブとしては、実施当時の「富岳」の運用で 350万個程度までのMPIプロセス数のジョブを正常に実行できた。とはいえ、その規模の計算ジョブは、実行しようと思えば無理ではないが、ユーザ制御が困難なメモリ消費の発生が確認された。そのようなメモリ消費は、MPIプロセス数が数十万個となる頃から無視できないレベルとなり、100 万個程度以上では、ユーザ制御が困難なメモリ消費がかなりの比率を占めることがわかった。メモリ枯渇に至らない範囲での固有値計算(ランチョス法)についても、約200万個のMPIプロセス数のジョブでも、経過時間を高並列化によって短縮が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、巨大次元疎行列の固有値計算をターゲットとしてその数値シミュレーションを大規模並列した形で高精度に実現することを目指し、「富岳」一般課題(2023年A期)hp230114において、高プロセス並列の固有値問題数値シミュレーションを実施した。MPI並列数が極めて大きい場合の計算ジョブの挙動に焦点を当て、富岳の計算ノードの約半分を一度に使うhugeクラスのジョブと共に、富岳の全系計算としての計算ジョブを様々な形で実施した。これらの計算ジョブによって得た、概要で述べた成果を含む論文を、日本シミュレーション学会論文誌で発表した。この論文の内容は「富岳」の安定運用に資する知見となるとともに、大規模並列シミュレーションを発展させるための基盤的成果となった。 以上がプロジェクト推進が概ね順調に進展していると判断した理由となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度までに明らかになった知見を基盤として、巨大次元の疎行列に対する固有値計算として未到達の事例の実現をを高精度な並列シミュレーションで目指していく。そのため、「富岳」の一般課題を定期募集の度に申請し、「富岳」の利用機会獲得を継続していく。hugeクラスや全系計算では中小規模の並列計算では顕著に現れないシステム起因のトラブルに見舞われる可能性も小さくないため、富岳サポートサイトと情報交換を密に行うことで対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、2023年度に予定していた、研究分担者や関連研究者との研究打ち合わせの一部に順延となった回が発生したことによる。使用計画としては、2024年度以降、研究分担者および関連研究者との研究打ち合わせを緊密かつ着実に行い、研究推進を加速させていく。2023年度内に得られた研究成果の発表を順次進めていく。そのため、印刷論文の投稿経費(投稿掲載料、英文校閲料、別刷代)、各種研究集会での公表のための費用の支出を予定している。
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