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2023 年度 実施状況報告書

画像分離技術を用いたニューラルネットワークのバイアス操作に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23K11174
研究機関同志社大学

研究代表者

奥田 正浩  同志社大学, 理工学部, 教授 (10336943)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード潜在バイアス / ハイパースペクトル画像 / ゼロショット復元
研究実績の概要

本研究では,潜在バイアスを活用し,学習画像を一切必要としないハイパースペクトル画像のゼロショット復元手法を開発した.このアプローチは,特定のドメインにおける画像分類の精度を向上させるためにニューラルネットワークの形状バイアスを増加させる.これら研究成果は,国際ジャーナルと国際会議において複数の論文として発表された.
「Zero-shot Hyperspectral Image Denoising using self-completion with 3D Random patterned masks」では,3Dランダムパターンマスクを用いた自己完結型のハイパースペクトル画像のデノイジング手法を開発し,学習データを必要としない革新的なアプローチを提示した.さらに,「CNN Pretrained Model with Shape Bias using Image Decomposition」では,画像の分解を用いて形状バイアスを有する事前学習済みCNNモデルを構築し,その有効性を確認した.
また,独自のデノイジング手法による成果をIEEE ICIP で発表し,さらに,「Effects on Selective Removal of Adversarial Examples for Noisy X-ray Images」では,ノイズの多いX線画像から敵対的な例を選択的に除去する効果について検証した.また,「Beyond Staircasing Effect: Robust Image Smoothing via L0 Gradient Minimization and Novel Gradient Constraints」と題した論文で,画像のスムージングに関する新しい手法を提案し,この手法が従来の方法と比較してロバストであることを実証した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

今年度の研究は,画像処理による形状,テクスチャ,色の各属性を分解・再構成することを目的とし,ニューラルネットワークのバイアス調整を通じて,特定のドメインにおける画像分類の精度を向上させる手法を開発することに集中していた.本研究目的を達成するために,イラスト画像などを用いた形状優位と色優位のデータセットを作成し,これらを活用した事前学習済みネットワークのファインチューニングを行い,バイアス調整による精度向上を目指した.

成果として,画像の分解を用いた事前学習済みCNNモデルを構築し,形状バイアスを増強させる事に成功し,形状バイアスを強調することによる精度向上の検証も行った.
また,これを応用して画像のハイパースペクトル分析における新しいアプローチ「Zero-shot Hyperspectral Image Denoising using self-completion with 3D Random patterned masks」を開発し,従来のモデルでは難しいとされていた学習データを一切必要としない画像のデノイジングを実現した.この成果は,国際的なジャーナルと会議で発表し,評価を受けた.
前者の研究を主に担当した大学院生は信号処理シンポジウムでその成果を発表し,若手研究奨励賞を受賞した.また,研究代表者は情報計測セミナーにて「ニューラルネットワークのバイアスとZero-shot 画像復元」と題してバイアスの効果について講演を行った.
本来の計画では,形状,テクスチャ,色の属性に焦点を当てたバイアス調整を行うことにより,特定のドメインの精度を向上させることが主目的であったが,具体的にハイパースペクトル画像に対する新しいデノイジング手法を開発し,実際にそれをゼロショットで達成した点は,計画以上の成果であると考えられる.

今後の研究の推進方策

連続的なバイアス調整とバイアス評価法に関するこの研究領域における主要な目標は,データセット内の画像に対して特定の属性(形状,テクスチャ,色)に重みを連続的に変化させることで,様々なバイアスレベルの学習データを生成することである.この過程では,生成されたデータに対するバイアスの影響を定量的に評価する新たな方法論を開発する必要がある.具体的には,異なる属性の優位性を評価するための指標を設定し,それに基づいて実験を行う.これにより,人間の主観に依存することなく,客観的かつ再現可能なバイアス評価が可能となる.

次に,ネットワークアーキテクチャの最適化を図る.特に,カーネルサイズやカーネルDilationの設定が形状やテクスチャバイアスに及ぼす影響に焦点を当て,これらのパラメータが画像分類の精度にどのように寄与するかを詳細に分析する.この分析結果を基に,画像認識の精度を向上させるための新しいネットワーク構造を設計する.
研究の実施にあたっては,以下の手順を踏むことが推奨される.まず,既存のデータセットを用いて初期の実験を行い,基本的なバイアスの影響を理解する.次に,実験結果を基にして,特定のバイアスを持つ画像を生成するためのアルゴリズムを開発する.さらに,これらの画像を用いてネットワークの訓練を行い,バイアスの定量的な評価とネットワークパラメータの最適化を同時に進める.
これらの研究は,深層学習のなかでも特に画像分類でのバイアスの重要性の理解を深めるだけでなく,公平で透明な機械学習モデルの開発にも寄与することが期待される.さらに,ノイズやボケなどの画像劣化に対する耐性やAdversarlal Attackに対するロバスト性の向上にもつながることが考えられ,それらも含めて検証を行う.

次年度使用額が生じた理由

次年度に研究費を持ち越した主な理由は,計画していた国際会議が大型台風の影響により中止になったことと,機械学習用のクラウド使用料が当初の予定よりも低額だったためである.
次年度の使用計画としては,新たに国際会議に論文を投稿し,さらに,研究成果の発表として,2024年度中に国際的な学術雑誌に論文を投稿する計画である.これには,研究データの整理と分析,論文執筆のための時間が必要であり,これまでの研究結果をもとに質の高い論文を目指す.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] Beyond Staircasing Effect: Robust Image Smoothing via ?0 Gradient Minimization and Novel Gradient Constraints2023

    • 著者名/発表者名
      Matsuoka Ryo、Okuda Masahiro
    • 雑誌名

      Signals

      巻: 4 ページ: 669~686

    • DOI

      10.3390/signals4040037

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Zero-Shot Hyperspectral Image Denoising Using Self-Completion With 3D Random Patterned Masks2023

    • 著者名/発表者名
      Itasaka Tatsuki、Okuda Masahiro
    • 雑誌名

      IEEE Access

      巻: 11 ページ: 79305~79314

    • DOI

      10.1109/access.2023.3298447

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] CNN Pretrained Model with Shape Bias using Image Decomposition2023

    • 著者名/発表者名
      Iwata Akinori、Okuda Masahiro
    • 雑誌名

      APSIPA Transactions on Signal and Information Processing

      巻: 12 ページ: 1-10

    • DOI

      10.1561/116.00000113

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Zero-shot Hyperspectral Image Denoising with Self-completion with Patterned Masks2023

    • 著者名/発表者名
      [Tatsuki Itasaka,Masahiro Okuda]
    • 学会等名
      IEEE International Conference on Image Processing (ICIP)
    • 国際学会
  • [学会発表] Evaluating Effectiveness of Adversarial Examples for Multivariate Time-series Data with Externality2023

    • 著者名/発表者名
      [Masatomo Yoshida,Masahiro Okuda]
    • 学会等名
      International Workshop on Smart Info-Media Systems in Asia
    • 国際学会
  • [学会発表] Effects on Selective Removal of Adversarial Examples for Noisy X-ray Images2023

    • 著者名/発表者名
      Namura Haruto、Itasaka Tatsuki、Okuda Masahiro
    • 学会等名
      International Conference on Intelligent Medicine and Image Processing (IMIP)
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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