研究課題/領域番号 |
23K11245
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
杉谷 栄規 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (40780474)
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研究分担者 |
琵琶 哲志 東北大学, 工学研究科, 教授 (50314034)
小西 啓治 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (90259911)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 振動停止現象 / 熱音響自励振動 / 結合発振器ネットワーク / 遅延結合 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,産業システムの燃焼器等で生じる熱音響自励振動の抑制のために,実用的な相互作用の設計に取り組んできた.実施計画として,テーマ①「周波数に対してロバストな相互作用」とテーマ②「相互作用の強さ低減」を並行しておこなっている.テーマ①に関しては,リミットサイクル発振のトイモデルであるスチュアートランダウ発振器を用いて,発振器の周波数と振動停止現象の安定領域について,解析的に詳細な調査をおこなった.その結果,振動停止現象が発生する周波数帯域が最大となる相互作用の条件があることが判明した.また,ネットワーク構造においても,2部グラフは周波数変動に対して脆弱であり,完全グラフは,周波数変動に対して頑強であることを発見した.これらの調査結果をもとに,周波数が大きく変更されても振動停止現象を維持できるロバストな相互作用設計法を提案した.この成果が,スチュアートランダウ発振器だけでなく,Hopf分岐由来の他の発振器にも適用可能であることを数値的に示した.本成果は,現在投稿中である.また,テーマ②に関しては,二つのレイヤーから成る遅延結合結合振動子ネットワークにおいて,それぞれのレイヤー内の発振器の周波数間に適切に誤差を与えることで,振動停止現象を発生させるための結合強度を大幅に下げられることを報告した.物理的制約などで結合強度を強く設定できないシステムに対して,本手法は非常に有効であると考えられる.本成果は,アメリカ物理学会論文誌に掲載している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,1年目は,主に解析的な側面でテーマ①,②の調査を並行しておこなった.それぞれで成果が出ており,一部論文となる成果も出ているため,本課題はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
テーマ①,②ともに,理論的な調査は,計画通りに進んでいる.今後は,実際の熱音響システムを用いた実験検証もおこなっていく予定である. しかし,実際の熱音響システムは,これまでに扱ってきた発振器モデルと定性的に異なる性質を持っていることがわかっているため,これまでの理論をそのまま適用はできない. そのため,熱音響自励振動の数理モデルの分岐解析などを通じて,熱音響振動に関する知見をより深めることが,実験への足掛かりになると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
電子回路実験で使用予定であった機器の購入を見送ったために次年度使用額が生じた.理論計算や数値シミュレーションが計画通りに進めば,来年度に電子回路計測機器を購入予定である.
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