研究課題/領域番号 |
23K11252
|
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
森 直樹 大阪公立大学, 大学院情報学研究科, 教授 (90295717)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
|
キーワード | 深層学習 / AutoML / 創作物理解 / NAS / 生成AI / 熱力学的遺伝アルゴリズム / 進化型計算 |
研究実績の概要 |
人工知能が社会の基盤技術として重要視される中,深層学習の爆発的な発展を背景として,人の創作物を対象とした研究が解析および生成の両面から進んでいる.しかしながらそのほとんどは,従来の識別タスクのデータを創作物に置き換えただけで,創作者の意図を考慮した研究はほとんどなされていない.BERT や GPT-4 に代表される自然言語処理の分野では生成を含め高度な文章関連タスクが実現され始めているが,創作過程で込められた作者の想いを主体的に扱い,創作者と研究者をつなぐための人工知能の実現には至っていない. また,深層学習のモデルの複雑化に伴い AutoML (Automated Machine Learning) と呼ばれる分野が急速に発展を遂げている.AutoMLは,機械学習モデルの開発プロセスを自動化する技術の総称で,特徴量エンジニアリング,モデルの選択およびハイパーパラメータの最適化等が含まれ,これらを自動化し,より効率的なモデル開発を可能とする.この AutoML の一つとして位置づけられる NAS(Neural Architecture Search)が注目されている.NAS は特にモデルのアーキテクチャの最適化に焦点を当てて探索をする手法で,進化型計算との親和性が高いという特徴を持つ. 以上の点を背景として,本研究課題では創作物を対象とする人工知能フレームワーク構築のために,NAS に基づき申請者が提案している進化型計算の一つである熱力学的遺伝アルゴリズムを取り入れた進化型 AutoML を構築し,データセットおよび手法の両面から人工知能分野における創作物研究を進める.最終的に,創作物データセットの構築および創作物を理解できる進化的な人工知能フレームワークの提案を目指す.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,生成 AI を用いただまし絵のような自然界には存在しない人の創作に基づいている画像の認識およびエージェントベースドシミュレーションに基づくストーリーの自動生成について Generative Agent の応用を検討した. AutoML に関しては提案中である熱力学的遺伝アルゴリズムを導入した NAS である tdgaCNN の改良および Transformer の学習効率の向上に関して研究を実施した.また,プロンプトエンジニアリングに熱力学的遺伝アルゴリズムを導入した手法を提案し,プロンプト個体群における多様性の重要性を示した.研究成果は国内外での学会発表を通じて公表し,多くの研究者との意見交換や受賞などによって研究の有効性を示した. 課題全体として,画像に基づく生成 AI の研究(だまし絵理解),ストーリー生成に基づく研究(Generative Agent),AutoML に関する研究 (Transformer の構造学習,プロンプトエンジニアリングへの進化型計算の導入)およびその他の創作物理解(生成 AI に基づくキャラクター構築) に関して多くの成果を得た.ストーリー理解に関する研究について,ChatGPT など最新の Transformer に基づく生成手法について研究を開始できたことが重要な成果である.特に,単なるライブラリの適用ではなく,Transformer に関しては Multi-head Attention に着眼した学習改善手法を,プロンプトエンジニアリングについては進化型計算を導入した手法を提案することでより理論的な内容に踏み込んだ結果を得ることができた.以上の点から進捗は概ね順調であると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究は,以下の具体的な研究項目に従って進める予定である. 1.生成 AI とマルチエージェントシステムを利用したストーリー生成手法の研究: 生成 AI を有するエージェント間の相互作用により創発的にストーリーを生成する方法を,Generative Agent を利用して検討していく.特に,生成したストーリーの評価方法について詳細に検討していく. 2.進化型 AutoML の研究: 現在,tdgaCNN への Skip Connection の導入手法および多層個体群を導入した NAS 手法について検討している.ResNet で有用性が示されている Skip Connection であるが,tdgaCNN に導入する場合は,入出力サイズに関する検討が必要となる.多層個体群を導入した NAS はより複雑な構造を探索可能であるという利点があり,実問題への適用を視野にいれた研究を進める予定である. 3.個性を持ったキャラクターの構築に関する研究: ストーリー生成において重要なポイントは魅力的なキャラクターの創出であり,そのキャラクターが自動的に相互作用することができればストーリー生成の研究は著しく発展すると考えられる.そこで,生成 AI に基づくキャラクター構築に関する研究を進めていく. 今後も新しい生成 AI 技術が提案されていくことが想定される.そこで,常に最新の研究動向に目を向け,応用と理論の両方を勘案して研究を実施して行く予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
端数としてどうしても処理できない 1 円が余ってしまったので次年度に繰り越した.
|