脳波信号に対する機械学習法、時系列処理法を開発する。特に、脳波信号からヒトの意図を推定し、様々なフィードバックや機器操作に利用する技術であるbrain-computer interface (BCI)の利用の場を、実験環境のみならずより広い環境で利用する際に計測上問題となるノイズや欠測に対応できるような方法の開発と検証を実施する。本年度は、モデルアンサンブル、画像解析用深層学習モデルの転用といった開発に取り組んだ。モデルアンサンブルとは、複数の機械学習モデルを統合利用するものであり、一般的には弱学習器を多数組合せて使うバギングやブースティングなどの手法もあるが、今回は「強い」学習器を少数組合せて用いる構成とした。脳波信号に対しては、学習モデルが3個程度の組合せで単体よりも精度向上が見られた。モデルの個数が増えるとその分だけ計算量も増加するためリアルタイム処理に適用するには注意を要するが、今回はサーバ上の実験による精度検証にとどめた。また、画像解析用深層学習モデルの転用については、画像分野の方が脳波分野よりも圧倒的に深層学習の研究の量が多いため技術進展が早いという特性を利用し、画像分野の成果を脳波分野に転用して活用しようというものである。ただし、データの次元が、画像は縦×横(映像の場合は縦×横×時刻)、脳波は時刻×チャネルと異なるため、直接適用することは難しい。そこで、脳波を画像と同じ次元として扱うための工夫が必要となる。脳波信号を多チャンネルの時系列プロットとして画像化したり、短時間フーリエ変換などの時間周波数解析により画像化したりすることで、画像用モデルの入力とすることが可能となる。
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