研究課題/領域番号 |
23K11297
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
田村 かおり 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (00762535)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 嗅覚 / 脳波 / 事象関連電位 / 連想 / 色 / 視覚 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、におい刺激がどのような連想情報をもたらすのか、またその連想されたモダリティに対してにおいがどのような影響を与えるのかに注目している。主たる問いは「においから連想される【色】」に着目し、嗅覚-連想視覚情報モジュレーション機構の解明を行うことである。 研究期間中に複数の目的を設定しているが、2023年度は 【目的1.においから連想される色回答の個人内・個人間分散定量化、および定量化手法確立】 に関する内容について研究を推進した。これまでに開発していたシステムを改善し、においから連想される「色」を計測する「色作製回答法」を確立した。この手法を用いて、複数のにおい物質に対する連想色の計測・可視化に成功した。この内容は第25回日本感性工学会大会にて発表した。現在も開発手法による計測を進めている。 さらに 【目的2. 個人差の小さい「におい」が連想情報認知に及ぼす影響の検討】に関しても、一部検討を行った。におい連想色のワーキングメモリタスク(明度 N-back)パラダイムを開発し、このタスク中の脳波事象関連電位解析を行った。タスク中ににおい刺激提示を行い、においがどのような影響を神経生理学的に与えたか検討した。 この検討では、レモン精油およびリモネン(レモン精油の主成分)が、連想色(オレンジ系の色)の明度短期記憶にどのような影響を与えるか、脳波事象関連電位解析から検討を行った。結果として、レモン精油・リモネン・無臭の3種のにおい提示条件下において、短期記憶課題中の事象関連電位P300成分に有意な差があることを確認した。本実験の結果と考察についても同じく第25回日本感性工学会大会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的と計画に対し、おおむね順調に進展している。まず、におい物質個人差測定実験・個人差データ解析について、すでに30名程度の被験者から解析を行っている。本計測は延べ人数50名を目指しており、ほぼ計画通りの進捗と言って良い。 当初の予定では「におい物質個人差測定」の結果から、連想情報が嗅覚に与える認知生理学的な影響を検討する予定であった。現在、この認知生理学的影響に関する予備検討や派生的な検討を開始しており、こちらも計画通りの進捗といえる。 本研究課題に取り組み開始した2023年度は、関連研究を行う研究者との出会いがあった。複数の共同研究者と、派生テーマでの共同研究を検討する動きが始まっている。今後はこれらの派生テーマも含めて研究課題に取り組んでいくことになると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
まず【目的1.においから連想される色回答の個人内・個人間分散定量化、および定量化手法確立】 に関して、2023年度以降も引き続き定量化の検討に取り組む。現在、嗅覚プロフェッショナル職と嗅覚ノービスの二群について計測を進めている。においの事前知識有無により、連想情報にどのような影響があるかについても検討する予定である。
【目的2. 個人差の小さい「におい」が連想情報認知に及ぼす影響の検討】に関して、現在、におい提示がにおい連想色の認知に与える影響を検討するため、脳波事象関連電位計測実験を計画している。においの候補と視覚情報提示の方法は複数の案があり、今後の比較検討の中から条件を蹴ってしていく。さらに、におい提示方法についても複数検討する。事象関連電位応答には、「嗅覚への慣れ」「複数刺激提示によるS/N比」「刺激提示への予測」などの要因も反映されると考えられ、本研究課題の仮説を検討する上ではこれらの要因をできる限り排除しなければならない。今後は計測方法や刺激提示方法の修正および比較検討も視野に入れ、引き続き研究を行っていく。 研究成果発表についても引き続き取り組む。まずは研究期間中に学会発表を複数回行い、期間終了までに論文原稿の完成と投稿ができるよう、進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は他経費による実験謝金支払いが可能であったため、他経費の執行を優先した。2024年度以降は被験者参加実験への謝金、および遠方への被験者・実験アルバイト者の旅費も含めて執行する予定がある。さらに物品購入などもすすめ、派生的な研究テーマも含めて引き続き計画的な予算執行を行い、課題を推進していく。
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