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2023 年度 実施状況報告書

物理・仮想トレーサー同時データ同化による線状降水帯の水蒸気起源の推定

研究課題

研究課題/領域番号 23K11398
研究機関気象庁気象研究所

研究代表者

田上 雅浩  気象庁気象研究所, 気象観測研究部, 研究官 (20735550)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワード線状降水帯 / 水蒸気起源 / 水の安定同位体 / データ同化 / メソモデル
研究実績の概要

今年度は、気象庁メソモデルasucaへの仮想トレーサーの導入、物理トレーサーの定式化の整理、トレーサー同化システムの開発に取り組んだ。
仮想トレーサー(色水)をメソモデルに導入するため、モデル本体およびモデル周囲のシェルスクリプトを詳細にコードレビューした。その後、モデル本体に仮想トレーサーを導入し、次の時間ステップにトレーサーの計算結果を引き継げるようにした。これら開発したコードがコンパイルされることを確認した。
物理トレーサー(水同位体)をメソモデルに導入するため、物理トレーサーに関する定式化を整理した。物理トレーサーを試験的に全球非静力学モデルに導入した論文が国際誌から出版され、該当論文がプレスリリースされた。本論文の知見を活かし、メソモデルへの物理トレーサーの導入を進めている。
今年度は、さらにトレーサーを同化するための同化システムの開発を行った。データ同化システムは他のモデルシステム(NICAM-LETKF)でも採用されているものを利用することを想定しており、そのモデルシステムを用いて物理トレーサーを同化できるように開発と改良を行った。改良したデータ同化システムを用いて、多数の理想的な条件下での同化実験を実施し、物理トレーサーを同化する上での問題点を整理した。特に、水蒸気量の観測誤差の設定、トレーサー量がゼロの場合の対応、他の水物質量やその同位体比をどのように扱うが課題としてあがった。これら課題については、NICAM-LETKFを用いながら引き続き対応策を検討する。

現在までの達成度
現在までの達成度

1: 当初の計画以上に進展している

理由

今年度はメソモデルへの物理・仮想トレーサーの導入という計画だったが、さらにトレーサー同化システムの開発を行い、当初の計画以上に進展した。
仮想トレーサーの導入をスムーズに進めるため、今年度前半にメソモデルのコードレビューを行った。具体的には、メソモデル周囲で引き継がれるデータの配置や準備の流れ、モデル本体での力学過程や物理過程間でのデータ受け渡しや計算過程についてレビューした。その後、コードレビューの結果をもとに、メソモデルへ仮想トレーサーを導入した。開発したコードが全て正常にコンパイルされることを確認した。
物理トレーサー(水同位体)は、仮想トレーサー導入後にメソモデルへ導入するため、別途物理トレーサーに関する定式化を整理した。物理トレーサーをテスト的に全球非静力学モデルに導入した論文が国際誌から出版され、メソモデルへの物理トレーサーの導入するための基盤が整理された。
データ同化スキームの開発は2024年度の実施予定であったが前倒しした。メソモデルには四次元変分法が導入されているが、トレーサーには十分に対応できていないため、他のデータ同化手法を利用する必要がある。本研究では、他の水同位体モデル同化システムで利用されている局所アンサンブルカルマンフィルター(LETKF)を利用する。このLETKFは水同位体をシミュレーションできるNICAM-LETKFに導入されているため、NICAM-LETKFを利用しトレーサーを同化するための枠組みを開発した。また、NICAM-LETKFを用いて、物理トレーサー(水同位体)を同化するときの問題点を調査した。水蒸気量の観測誤差、トレーサー量がゼロになるときの対応、雲水量や雲水同位体比の同化について検討する必要があることが判明した。

今後の研究の推進方策

次年度は、引き続きメソモデルへのトレーサーの導入を行う。現状、デフォルト設定を利用してモデル開発を進めているが、デフォルト設定では、トレーサーを追加すると所々メモリオーバーが発生することが明らかとなった。メモリオーバーの問題に対応するため、同化システムをオフにし、解像度などを柔軟に変更することができる気象研版メソモデルを用いて、この問題を克服していく予定である。
物理トレーサー(水同位体)を同化する際に、水蒸気量の観測誤差の設定、雲水量や雲水同位体比の同化について課題があることが判明した。この問題は、本研究課題で開発を進めている同化システムでも同様の問題が生じる可能性が高いことから、NICAM-LETKFを用いて調査・対策方針を考えていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

物理トレーサーのデータ同化論文を執筆し、それに関する英文添削料として研究予算を確保していた。結果として、年度内の英文添削が間に合わず、次年度使用額が生じた。次年度早々に英文添削に依頼している。

備考

(1)はプレスリリースに関するHP。プレスリリース代表機関のURLのみ示す。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Modeling Water Isotopes Using a Global Non‐Hydrostatic Model With an Explicit Convection: Comparison With Gridded Data Sets and Site Observations2023

    • 著者名/発表者名
      Tanoue Masahiro、Yashiro Hisashi、Takano Yuki、Yoshimura Kei、Kodama Chihiro、Satoh Masaki
    • 雑誌名

      Journal of Geophysical Research: Atmospheres

      巻: 128 ページ: 1 29

    • DOI

      10.1029/2021JD036419

    • 査読あり
  • [学会発表] Global cloud-system-resolving model equipped with stable water isotopes (NICAM-WISO)2023

    • 著者名/発表者名
      TANOUE., M., H. Yashiro, K. Yoshimura
    • 学会等名
      International Symposium on Isotope Hydrology
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] NICAM-LETKFによる水同位体大アンサンブル同化実験2023

    • 著者名/発表者名
      田上雅浩・芳村圭・八代尚
    • 学会等名
      日本気象学会2023年度春季大会
  • [備考] 大気の水循環を追跡する高解像度シミュレーションー次世代の水同位体・大気大循環モデルの開発ー

    • URL

      https://www.nies.go.jp/whatsnew/2023/20231206-2/20231206-2.html

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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