研究課題/領域番号 |
23K11431
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
勝部 孝則 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線影響研究部, 上席研究員 (10311375)
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研究分担者 |
劉 翠華 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 重粒子線治療研究部, 主任研究員 (00512427)
王 冰 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線影響研究部, グループリーダー (10300914)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 放射線感受性 / 食習慣 / マウス |
研究実績の概要 |
背景:疫学研究から、母体の栄養状態・健康状態が子宮内の胎児に影響し、子の将来の健康や病気のリスクを左右することが明らかになり、DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)説として注目されている。我々はマウスを用いた実験系で、母マウスの高脂肪摂取(肥満のモデル)が、その仔の造血組織に発達不全を誘導し、仔の放射線感受性が亢進することを見出した。本課題では、仔の造血不全の原因となるDOHaD関連遺伝子を明らかにする。 実験系:C57BL/6J雌マウスを2群に分け、離乳直後(3週齢)から高脂肪餌もしくは通常餌で飼育する。10週齢でC3H雄マウス(11週齢、通常餌)と交配し、高脂肪餌母マウスの仔(高脂仔マウス)、通常餌母マウスの仔(通常仔マウス)を得る。生後4週まではそれぞれの母マウスからの授乳により、その後は全ての仔マウスについて通常餌により飼育する。この実験系で、出生後7日目の仔マウスに3.8GyのX線を照射したとき、高脂仔マウス雄において、造血組織の不全に起因する放射線感受性の亢進を見出している。 本研究課題では、胎児期および授乳期の造血組織(肝臓、骨髄、脾臓、胸腺)を採集し、各組織の分化、増殖、遺伝子発現における高脂仔マウス雄と通常仔マウス雄の間の相違を、RNA-seq法および病理解析により検討する。 今年度成果:1)マウス胎児および乳児から造血組織を分離する方法を確立した。ゲノムDNAからPCRにより雌雄判別を行う方法を確立した。2)雌マウス200匹と雄マウス100匹を導入し、上記の方法で高脂仔マウスと通常仔マウスを得た。3)受胎後14.5日(肝臓)と18.5日(肝臓、骨髄、脾臓、胸腺)胎児、生後19日(肝臓、骨髄、脾臓、胸腺)乳児から造血組織を採取すると同時に、各個体の雌雄を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 計画に従い、胎児期および乳児期の造血組織(肝臓、骨髄、脾臓、胸腺)を分離する方法を確立した。特に胎児の骨髄については、微小で脆弱な大腿骨および上腕骨から、遠心力により骨髄のみを分離する方法を確立した。また、胎児については生殖器での雌雄判別が出来ないことから、ゲノムDNAのPCRにより雌雄を判別する方法を確立した。受胎後14.5日、18.5日の造血組織を採取するためには、受胎日を特定する必要がある。交配期間を一晩(午後7時半~明朝7時半の12時間)とすることで、受胎日時を限定した。12時間で交配が成功する確率から逆算し、雌マウス200匹と雄マウス100匹を導入・交配した。造血組織を採取する作業の都合から、交配は2回に分けて行った。ゲノムDNAのPCRにより性別を決定した結果、高脂仔マウス、通常仔マウスとも、本課題の解析に十分な量の雄胎児(受胎後14.5日、18.5日)および雄乳児(生後19日)の造血組織が得られていることを確認した(各実験群最低6匹分の造血組織)。一部のサンプルについて、今年度内にRNA-seq解析外部委託に出す予定であったが、次年度に持ち越しとなった。既に外部委託の準備は出来ており、次年度初旬に着手できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
1)得られた各発生段階の造血組織についてRNA-seq解析を行う。特に造血組織の発生・分化に関わる遺伝子に着目し、高脂仔マウスと通常仔マウスの間で発現の異なる遺伝子を探査する。肥満に付随して増加する脂肪細胞や、慢性的な炎症反応が、造血組織の分化に関与するとの知見がある。脂肪細胞の発生・分化や炎症反応に関与する遺伝子にも着目する。 2)得られた各発生段階の造血組織について病理解析を行う。上述の通り、脂肪細胞が造血組織の発生・分化に関与するとの知見があり、脂肪細胞の量的・質的な相違に着目して解析を行う。 3)研究成果を各種の学会や学術専門誌で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
RNA-seqの外部委託費用として、本課題の期間中総額1,400千円程度を見込んでいる。予算の都合上、R5年度もしくはR6年度の単年度の予算で、1,400千円を賄うのは困難である。R5年度予算で700千円程度、R6年度予算で700千円程度を賄う予定であった。R5年度の実験の進捗が予定よりわずかに遅れたために、年度内にRNA-seqの外部委託をすることが出来なかった。その為、RNA-seq外部委託費用の一部として、R5年度残金668,771円をR6年度に繰り越した。予定通り、R5年度残金とR6年度予算から、1,400千円程度を、RNA-seqの外部委託費として使用する予定である。
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