研究実績の概要 |
臭化難燃剤が、我々の見出したケトン体利用酵素-アセトアセチルCoA合成酵素(AACS)を介した代謝経路に与える影響を明らかとするために、2023年度はまず褐色脂肪組織の初代培養細胞系および食事性肥満モデルの構築と、それらを用いたケトン体代謝への影響を検討した。4週齢のddYマウスにHFDまたは高ショ糖食(HSD)を12週間摂取させたところ、HFD群のBATではAACS、アセチル-CoAカルボキシラーゼ-1(Acc-1)、脂肪酸合成酵素(Fas)の有意な発現低下が観察されたが、HSD群では発現に影響はなかった。褐色脂肪組織由来の初代培養細胞を用いた解析では、イソプロテレノール24時間投与により、AacsとFasの発現低下が認められた。さらに、siRNAによるAacsの抑制は、FasとAcc-1の発現を著しく低下させたが、uncoupling protein-1(UCP-1)などの発現には影響を与えなかった。これらの結果から、HFDはBATにおける脂肪生成のためのケトン体利用を抑制する可能性があり、AACS遺伝子の発現はBATにおける脂肪酸合成を制御するために重要である可能性が示唆された。 TBBP-Aが培養白色脂肪細胞に与えるベージュ化の影響を踏まえると、これらの結果は本邦で使用されている臭化難燃剤TBBP-AがAACSを介して脂肪酸合成の制御を乱す可能性を示唆している。 なお、本研究結果は、2023にMetabolites誌にて報告した(M. Yamasaki et al., High-Fat-Diet Suppressed Ketone Body Utilization for Lipogenic Pathway in Brown Adipose Tissues, Metabolites, 13 (4), 519. (2023))
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