研究課題/領域番号 |
23K11451
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
池島 耕 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (30582473)
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研究分担者 |
石丸 伊知郎 香川大学, 創造工学部, 教授 (70325322)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | マイクロプラスチック / 河口域 / 底質 / 粒度 / 干潟 / 食性 |
研究実績の概要 |
河口域は陸域で排出されたプラスチックの海への入り口であり、大小のプラスチックが滞留し、マイクロプラスチック (MP) が多く生成するMP汚染の“hotspot”となっている可能性があるが、MP汚染の実態には不明な点が多い。本研究では、1) 河口域のMP汚染リスクの高い生息環境と水生生物を、河口域の水中・底質および生物体内におけるMPの分布パターンから明らかにする。さらに、2) 河口域潮間帯は流入したMPが蓄積して「流入量 > 流出量」となる“sink” であるのか、それともMPが多く生成して「流入量 < 流出量」となる“source” であるのかを、MPの分布パターンから明らかにすることを目的としている。 初年度は、河口干潟の底質を採取し、MP量と強熱減量および底質粒径との相関分析を行なった。底質中のMP量は強熱減量と正の相関、底質粒径(モード)と負の相関が認められ、微細な土壌粒子や有機物の堆積しやすい場所にMPも堆積しやすいことが示唆された。しかし、設定したトランセクト間で傾向が異なる場合もあり、地形、水理条件や植生帯等との関係についてもさらに検討する必要があることがわかった。 また、河口域に生息する水生生物の体内MP量と生息環境のMP汚染レベルについて、マガキを対象に検討した。エラと消化管内のMPの分析手法を確立し、高知県内の河川の河口域2地点から採集した標本について、底質MPとの関係を検討し地点間のMP量の違いが示唆され、今後さらに調査地点を増やして検証する。また、7魚類を対象に食性とエラおよび消化管内のMP量を分析した結果、食性グループによりMP量とMPの組成に違いが示され、デトリタス食性の魚類でMP量が多い傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画していた、底質と水中のマイクロプラスチック(MP)の分析については、調査を計画していた場所の一部で、護岸強化工事が行われ、標本の採取が行えない事態が生じたが、これまでに得られた底質標本からMP量と底質条件の関係性を示唆する結果、マガキについては底質との関係性を示唆する結果が得られ、水生生物のMP汚染についても魚類については食性との関係性が示された。また、プラスチックごみとマイクロプラスチックの組成の比較、潮汐に伴う水中のMP量と組成の変化についても予備的な調査を実施することができたことから、概ね順調に進展しているものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、当初の計画に従い、高知市内の河口域に調査区を設定し、1年を通して水質、底質のおよび生物(魚類とベントス)の採取を行い、降雨、潮汐、季節等の影響について検討する。また、ベントス(二枚貝およびカニ類)の汚染状況と水質、底質の関係性については、汚染レベルが異なると想定される幾つかの河川を調査地点として追加し検討を進める。さらに、採取されたMPの組成分析については、サイズ、形状、色に加えて、FT-IRおよび2次元中赤外分光イメージング装置による分析を行い、環境および生物中のマイクロプラスチックの組成の比較から、マイクロプラスチックの汚染リスクと動態を推定する。併せてイメージング装置による分析システムの改良も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた調査地において、工事による立ち入り禁止期間が生じ、調査地点を予定より減らして調査を実施したことなどにより、標本の採取に用いる容器、分析に使用する試薬代等の消耗品費、さらにRAの雇用経費等が予定より少なくなったこと、またマイクロプラスチックの分析項目について、分析がやや遅れて、試薬及び機器使用の料金が減額した。翌年度に調査地点を増やし、当初計画していた調査地点を含めた調査を実施するため、翌年度分として請求した助成金とあわせて、当初の計画を達成するための調査分析に使用する予定である。
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