研究課題/領域番号 |
23K11460
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
松野 義晴 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 教授 (00376378)
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研究分担者 |
吉岡 広陽 国際医療福祉大学, 医学部, 講師 (50523411)
宮宗 秀伸 国際医療福祉大学, 医学部, 講師 (80422252)
足達 哲也 帝塚山学院大学, 人間科学部, 教授 (60345014)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Early life stress / コルチゾール / 雄性生殖器系 / セルトリ細胞 / p27 / エピジェネティクス制御 |
研究実績の概要 |
本課題では発達早期におけるコルチゾール曝露がセルトリ細胞におよぼす影響を評価する。これまでに我々は、発達早期に抗ストレスホルモンであるコルチゾールの投与を受けたマウス精巣において、造精機能に必須の精子支持細胞であるセルトリ細胞の数が減少すること、さらに性成熟後のライフステージにおいて精子数が減少することを見出している。コルチゾールはその受容体であるグルココルチコイド受容体(GR)を介して作用することが知られている。2023年度はコルチゾールによるセルトリ細胞数減少のメカニズムを明らかにする一環として、GRの拮抗剤であるRU-486を用いた。新生児期ICRマウスについて生後1日目から10日目までの間、溶媒、コルチコステロン、コルチコステロンおよびRU-486の投与を行い、それらを対照群、新生児期コルチコステロン投与群、新生児期コルチコステロンおよびRU-486投与群とした。生後10日齢においてセルトリ細胞数を評価したところ、対照群と比較して新生児期コルチコステロン投与群では精巣精細管内あたりのセルトリ細胞数が減少し、新生児期コルチコステロンおよびRU-486投与群においてはセルトリ細胞数の減少が認められなかった。また精細管あたりのセルトリ細胞数に対する、セルトリ細胞増殖停止因子として知られるサイクリン依存性キナーゼインヒビター「p27」陽性セルトリ細胞数の比率について評価したところ、対照群と比較して新生児期コルチコステロン投与群では上昇し、新生児期コルチコステロンおよびRU-486投与群においては上昇が認められなかった。これらのデータは、発達早期におけるコルチゾール曝露がセルトリ細胞数の減少を引き起こす機序として、GRが関係していることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は研究計画通り、発達早期のコルチゾール曝露がセルトリ細胞数を減少させるメカニズムについて、in vivoにおける評価を行った。予測通り、GRの拮抗剤であるRU-486を用いることにより、コルチゾールによるセルトリ細胞数の減少が抑制された。さらにp27陽性セルトリ細胞数の比率についても、新生児期コルチコステロン投与群では上昇し、RU-486を同時投与した群においては上昇が抑制された。このことからコルチゾールによるセルトリ細胞数の減少はGRを介して引き起こされるものであると結論付けられると同時に、その機序の一端が明らかになった。また同時に、現在in vitroにおいてコルチゾール曝露がセルトリ細胞におよぼす影響評価についても予備検討を行っている。解析は現在進行中であるが、予備検討からはin vivoにおいて得られた結果を支持するデータが得られつつある。これらのことから、現在までの進捗状況は「(2)おおむね順調に進展している」に当てはまると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況は「(2)おおむね順調に進展している」に当てはまると判断した。次年度以降も計画に従い研究を進捗させる。2024年度は研究計画通りコルチゾール曝露がセルトリ細胞におよぼす影響についてin vitroにおける評価を行う。セルトリ細胞のin vitroにおける評価、ならびに計画されている「コルチゾール曝露がセルトリ細胞におけるエピジェネティクス制御におよぼす影響の評価」のためには、精巣組織中からセルトリ細胞を高純度で回収する必要がある。2024年度は特にこの点に注意して、セルトリ細胞回収のためのプロトコールにおいてより精度の高い方法の選定を試みる。なお、in vivoにおける評価については、対照群と各実験群の間で、アポトーシス陽性細胞数のカウント、精巣組織形態、セルトリ細胞の増殖に関わる各種ホルモン群(テストステロン、甲状腺ホルモンなど)の評価を行うことで、コルチゾール曝露によるセルトリ細胞数減少のメカニズムをより詳細に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度の進捗状況は「(2)おおむね順調に進展している」であったが、その一方でアポトーシス陽性細胞数のカウント、精巣組織形態、セルトリ細胞の増殖に関わる各種ホルモン群(テストステロン、甲状腺ホルモンなど)の評価、など、本来2023年度に予定されていた解析について評価が終わっていない項目、または未実施の項目が一部残されている。次年度使用額が生じた理由はこれらの解析項目に対する消耗品費を次年度に繰り越したことによる。従って、繰り越した研究費については予定通り、2024年度に計画しているこれらの解析項目を実施するための消耗品費購入に充てるものとする。
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