研究課題/領域番号 |
23K11461
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
畑中 朋美 城西大学, 薬学部, 教授 (10198749)
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研究分担者 |
馬渕 智生 東海大学, 医学部, 教授 (30408059)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | シックハウス症候群 / フタル酸エステル / 経皮吸収 / エステラーゼ / リスク評価 / カルボキシルエステラーゼ / 遺伝子型 |
研究実績の概要 |
本研究はシックハウス症候群のアジュバントの一つであるフタル酸エステルの皮膚からの吸収量と皮膚内の代謝活性の関係を定量的に解析することを目的としている。令和5年度は、入手したヒト皮膚切片を用いて、フタル酸ジブチル(DBP)の皮膚透過性や皮膚内代謝のデータをさらに蓄積するとともに、異物代謝酵素であるカルボキシルエステラーゼ(CES)に着目し、DBPの皮膚内代謝に及ぼす種々阻害剤の影響と、CES1の遺伝子型とCES1発現量およびDBP代謝活性との関係をについて評価した。 DBPのヒト皮膚ホモジネート中のDBPのからフタル酸モノブチル(BP)への加水分解速度は、エチレンジアミン四酢酸の影響は受けなかったが、フェニルメチルスルホニルフルオリドやリン酸ジエチルp-ニトロフェニル、ビス(4-ニトロフェニル)ホスフェートにより抑制された。このことから、DBPの皮膚内代謝はセリンプロテアーゼ、特にカルボキシルエステラーゼが担っていることが示唆された。 CES1は逆位重複遺伝子によりコードされ、CES1A1とそのexon1変異型、CES1A2と偽遺伝子であるCES1A3の組み合わせにより4つのハプロタイプと8つのディプロタイプが存在し、それぞれ肝臓中のCES1発現量と加水分解活性が異なることが報告されている。そこで、CES1遺伝子型と皮膚内のCES1発現量およびDBPの皮膚内代謝活性との関係を評価した。現時点では例数が少なく、明確な関連性は認められなかったが、今後例数を増やす予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はDBPの皮膚内代謝に及ぼす種々阻害剤の影響を明らかにした。また、CES1遺伝子型と皮膚内CES1発現量やDBP皮膚内代謝速度との関連を検討するため、遺伝子解析法を確立した。さらに、DBPの皮膚透過性と皮膚内代謝活性の関係を速度論的に解析するためのデータを15例追加できた。今後もデータの蓄積に努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度着手したCES1遺伝子型と皮膚内CES1発現量およびDBP皮膚内代謝活性との関連性評価をさらに進めるため、遺伝子解析データを追加する。また、CES2遺伝子についても調査を進め、フタル酸エステルの経皮吸収と遺伝子型の関連性を探る。さらに、DBPのヒト皮膚透過性と皮膚内代謝のデータを蓄積するとともに、皮膚透過性に及ぼす種々阻害剤の影響を評価する。以上の結果を、フタル酸エステル経皮吸収量と皮膚内代謝活性の関係の定量的解析の足掛かりとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね物品費に使用したが、施設費使用料や旅費の請求・支払日が締め切り間際であったため、他の予算から支払い、使用残額が生じた。次年度の物品費や旅費に組み込み使用する予定である。
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