研究課題/領域番号 |
23K11469
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研究機関 | 神戸市健康科学研究所 |
研究代表者 |
中西 典子 神戸市健康科学研究所, 感染症部, 副部長 (50615490)
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研究分担者 |
野本 竜平 神戸市健康科学研究所, 感染症部, 副部長 (60642238)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | L. pneumophila / 薬剤耐性化傾向 / 下水 / 河川 / 浴槽水 / ゲノム解析 |
研究実績の概要 |
本研究ではヒト生活環境下におけるL.pneumophila の薬剤耐性化傾向を網羅的に調べ、薬剤耐性L.pneumophila の生息環境を特定し、その耐性機序および遺伝的特徴を明らかにする。人工水系における抗菌薬耐性パターンの変化を早期に把握し、臨床分離株への影響を防ぐために、広範に調査を実施する。 本年度は、河川水や流入下水からのレジオネラ属菌の分布を調査した。流入下水はすべての季節において、レジオネラ属菌遺伝子が10の2乗~10の4乗 CFU/Lの間で検出された。分離された10種のレジオネラ属菌のうち、L. pneumophilaが最も多かった。河川・下水由来のL. pneumophilaにおいて6種類の新たな遺伝子型(ST)を特定し、薬剤感受性試験をEUCASTに従いE-testで実施したところ、CiprofloxacinとAzithromycin対するMIC値の分布はそれぞれ0.25-0.38μg/mL、0.064-0.38μg/mLであった。浴槽水由来において、SG1に次いで多いSG5とSG6 について、SBT ( sequence-based typing )解析を実施したところ、SG5 の 21株は14種類のST(6種類の新規STを含む)に、SG6の22株は15種類のST(6種類の新規STを含む)に分類され、臨床分離株で検出されるSTも含まれていた。今後、これら菌株についての薬剤感受性試験を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
河川・下水におけるレジオネラ属菌の分離方法を確立し、1年間実態調査することができた。また、SG1以外の浴槽水由来のL.pneumophilaについての分子疫学的解析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
種々の環境から分離されたL.pneumophilaの薬剤感受性試験を進めると共に、分子疫学解析を実施していく。マクロライド系抗菌薬耐性に寄与しているlpeAB efflux pumpの保有状況についても調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
河川・下水のレジオネラ属菌分離を重点的に実施したため。今後は、薬剤感受性試験試薬や分子疫学解析用試薬、次世代シーケンサー解析を含めた核酸配列解析用試薬として使用し、引き続き適切に予算を執行していく予定である。
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