研究実績の概要 |
初年度は、まず始めに湿式空気酸化における遷移金属の触媒作用を評価するための反応器を作製した。当初計画では流通式反応器を作製する予定であったが、超高圧空気圧縮機の入手が困難であったため、反応器の構造をバッチ式に変更した。酸化剤の酸素はボンベから直接注入する方式を採用した。また、反応器材質による触媒作用を最小化するため、純チタンを反応器材質に用いた。本装置の最高使用温度は300℃、最高圧力は20 MPaとなるよう設計した。次に、多孔質チタニア担体に含侵法で各種遷移金属を担持した触媒を合成し、これを用いて難分解性汚染物質のモデル化合物である1,4-ジオキサンの分解試験を実施した。分解試験の反応条件は、1,4-ジオキサン濃度=300 ppm、反応温度=300℃、注入酸素圧力=2.0 MPaとし、分解処理後の溶液をガスクロマトグラフィーおよび全有機炭素計(TOC計)で分析し、1,4-ジオキサンの分解率とTOC除去率を算出した。 始めに単元素触媒を合成してスクリーニングを行ったところ、Ruが高い触媒作用を示すことが分かった。一方、過酸化水素を酸化剤とする水熱酸化反応に対しRu触媒を用いたところ、触媒作用は見られず、逆に分解率を低下させる作用があることが分かった。次に、Cu/Ni二元触媒を合成し、湿式空気酸化の触媒に用いた。これまでの研究で、Cu/Ni二元触媒は過酸化水素を酸化剤とする水熱酸化反応において高い触媒作用を示すことが分かっているが、湿式空気酸化では触媒作用を示さなかった。最後に、Ru/Ni、Ru/Cu、Ru/Coの各二元触媒を合成し湿式空気酸化に対する触媒作用を評価した。Ru/NiとRu/CuはいずれもRu単独より触媒作用が低下したが、Ru/Coは触媒作用が向上する傾向が見られた。
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