研究課題/領域番号 |
23K11480
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
菅原 一輝 北九州市立大学, 国際環境工学部, 講師 (60792405)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 早生樹 / 根圏微生物 |
研究実績の概要 |
今年度は早生樹の植物生長促進微生物の探索と評価を中心に実施し、本研究のターゲットであるキリと国内に自生するセンダンの2種の根圏微生物叢の比較を行った。根圏の物理的な違いとして、センダンと比較してキリは成長初期段階から根の発達が旺盛であり、植樹後の定着率や不安定な地盤への適用に対する優位性が示唆された。根圏微生物叢についてはセンダンは深さ方向に叢変化の依存性があるのに対し、キリは深さに関係なくある一定の微生物叢を構成していることが明らかになった。また、根圏外の土壌についてもセンダンと比較してキリの場合は微生物叢に影響を与えていることが分析の結果示された。根圏土壌のIAA活性を評価したところ、根圏微生物叢の分布と同様にセンダンは深度方向に対してIAAの生産活性も上昇する傾向にあったが、キリの場合は深さ方向に依存せず根圏全体で同程度の活性を示した。一般的に根圏微生物は植物の根から分泌される有機炭素化合物を資化し、その植物固有の微生物叢を形成することから、キリは根圏の広い範囲に根からの分泌物を供給したため微生物叢の局在が見られなかったことが推察された。根圏微生物の内訳を評価したところ、センダンは窒素固定に関わるα-proteobacteriaのRhizobium属に属する微生物の存在が確認された。一方で、キリの場合は窒素固定に関与するような微生物の存在は確認されなかった。以上の検討により、同じ早生樹であっても根圏微生物が植物の生長に与える影響は異なり、キリの場合は窒素固定などの栄養供給よりもIAAなどの植物ホルモンの産生による生長促進による影響を受けることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた計画を順序を入れ替えて今年度は根圏微生物に関する検討を実施したが、その構成および機能を明らかにすることに成功した。次年度に電界印加を用いた生長促進に関わる検討を実施し、最終的にそれらを統合した栽培試験を行うスケジュールに変更はないため、おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は電界印加がキリの生長に及ぼす影響について評価する。まずキリの生長促進が発生する電界強度を水耕栽培条件下で検討し、最適な電界印加強度を見出す。次に電界印加パターンとその入力に対する生長促進挙動の持続性について評価を行い、持続的に生長促進が起きる電界印加方法について検討する。これらの検討について短期・中期的な試験を行うことで、最終年度の栽培試験に向けた知見を収集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
根圏微生物の解析について当初は外注での分析を想定していたが、学内の研究者の協力を得ることができたため、その分の費用が削減された。また、導入予定であった設備についても割安な機器を見積もり取得後に得ることができ、物品費が圧縮されたため。
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