研究課題/領域番号 |
23K11497
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
波岡 知昭 中部大学, 工学部, 教授 (90376955)
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研究分担者 |
橋本 真一 中部大学, 理工学部, 教授 (60598473)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 燃料極 / ハーフメタル / ダブルペロブスカイト |
研究実績の概要 |
水素リッチガスで駆動させることが可能な固体酸化物形燃料電池(SOFC)の実現のためには、燃料中不純物に対して耐性を有する燃料極が必要である。一般的なSOFC用燃料極として用いられているNi/YSZ電極は炭化水素に対して耐性が低く、Ni-freeな酸化物電極を用いる方法が検討されている。 ハーフメタル酸化物のSr2FeMoO6は高い電極性能を期待できるが、高温の酸化雰囲気・還元雰囲気ともに不安定で、このままでの実用化は困難である。我々は同酸化物のさらなる高性能化と幅広い酸素分圧条件下において高い相安定性を有する電極の実現を目指し、ダブルペロブスカイト構造のB’サイトに添加するカチオン種やB、B’サイトの元素比が性能に及ぼす影響を検討している。 2023年度はB’サイトにZr4+をドープしたSr2FeMo0.8Zr0.2O6-δ(SFMZ)の電子導電率や結晶構造の相安定性について検討を行った。調製条件はSr2FeMo0.8Nb0.2O6-δ(SFMN)(科研費20K12244)と同一条件とした。SFMNでは単相となる条件であったが、SFMZでは不純物としてSrZrO3が8.5 mass%ほど生成した。また、焼成条件の最適化によりSrZrO3含有量を2.6 mass%まで低下させることはできたが、それでも単相の実現は困難であった。 この2.6 mass%の不純物を含むSFMZの電子導電率を測定したところ、800℃でSFMNの半分の値を示した。また、SFMNは導電率測定温度の上昇とともに電子導電率が低下する金属的導電性を示したのに対し、SFMZはその逆の半導体的導電性を示すことがわかった。それ以外にも興味深い結果が得られたものの、単相を生成させることができず、このことから高温酸化雰囲気では不安定であることが推測され、Nbの代替物質としてのZrは魅力の乏しいドーパントであることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
B’サイトへ添加するアニオン種の影響を評価することが本研究の目的であるため、遅れているわけではない。しかし、2023年度は好ましい結果が得られたわけではないので、2024年度は研究速度を加速させたいと考えている。2023年度の研究実施により研究・分析方法のノウハウが蓄積されたため、加速は可能だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、当初と計画を変更し、高性能化よりも高い相安定化を目指すことを優先し、Zr4+とは別のB’サイト用ドーパントの選定を行うこととした。SFMZを単相とすることができなかったのは、試料調製条件において電気的中立性を維持することができなかったことが要因の一つだと考えている。そこで、2024年度は価数が低く、イオン半径の大きなMg2+をZr4+の代替物質として検討を行うことにした。 酸化雰囲気中にて電気的中立性を維持するためにはSr2FeMo0.75Mg0.25O6の組成が望ましいものと考えられることから、この条件、およびドーパント種の影響を評価するため、Sr2FeMo0.8Mg0.2O6やB、B’の組成についてもその影響を検討することとした。 ただし、研究手法に関しては2023年度と同一の手法を取り、XRF,XRD,リートベルド解析などの化学的・結晶構造解析により相安定性を、電子導電率の温度依存性の評価により電気化学性能の一部を評価することに変化はない。また、酸化物電極実現の際には、電解質材料との化学両立性を実現するためにGDC成膜する必要がある。これに関しても検討を開始することにする。
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