研究課題/領域番号 |
23K11524
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
杉本 賢二 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70596858)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | DEM / 復興事業 / 人為的地形改変 |
研究実績の概要 |
東日本大震災からの復興事業では,広域かつ大規模な人為的地形改変が行われたことから,事業実施による津波浸水リスク低減効果だけでなく,環境負荷や地盤災害の観点からも地形改変量を把握する必要がある.本研究課題では,東北地方の太平洋沿岸の市町村を対象として,震災直後と最新のDEM(数値標高モデル)とを用いて標高差分を計算し,DEMの解像度を乗じることで市区町村別及び用途地域別の地形改変量を,空間分布として推計した.震災直後および現在の標高情報であるDEMは,国土地理院の「基盤地図情報数値標高モデル(5mメッシュ)」を用いた.用途地域として,国土交通省の「国土数値情報 用途地域データ」を用いて,用途地域の分類変更や新たに指定された区域における,地形改変の度合いを評価した.その結果,地形改変量は岩手県で6.29億m3,宮城県で5.96億m3と推計され,宮古市から東松島市までの地域で改変量が多いことが示された.地形改変は,沿岸部では,宅地造成による標高減少や嵩上げによる標高の増加が顕著であった.山間部では,自動車道路の建設に伴う切土盛土の連続がみられるなど,復興事業による地形改変の空間分布を可視化することができた.また,震災前後の用途地域を用いた面積あたりの地形改変量(改変強度)を算出した結果,宅地造成が行われた住宅用途で大きな改変強度となった.これは,露天掘り採掘や土砂採取といった人為的地形改変と比較すると強度は小さいが,復興事業が広域で実施されたことから大規模な地形改変が行われたといえる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,2023年度はDEMを用いた地形改変量の推計を行い,その成果を学会発表や学術論文として公表した.その際,発表の質疑や査読者の指摘事項を踏まえて,推計の精緻化や制約を見出すことができ,計画以上の成果を得ることができた.一方で,自治体の方針や地域特性を確認するための現地調査は十分に行えておらず,2024年度は顕著な地形改変が行われた地域を特定して,複数回の現地調査を行い,現状を踏まえた研究を実施する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
航空レーザ測量のほか人工衛星によるDEMの取得と整理を行っており,推計を行う素地ができている.また,結果を英語学術論文としてまとめており,早期に投稿できるよう努める.
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次年度使用額が生じた理由 |
英語論文の校正費として「その他」での支出を予定していたが,執筆の遅れにより支出できなかった.
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