研究課題/領域番号 |
23K11537
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
大塚 佳臣 東洋大学, 総合情報学部, 教授 (50584364)
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研究分担者 |
木持 謙 埼玉県環境科学国際センター, 水環境担当, 担当部長 (50415379)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 環境DNA/RNA / 水辺の価値 / 住民意識 / 生物多様性 / 水生生物 / 新河岸川 |
研究実績の概要 |
本研究では埼玉県川越市を対象地域とし、1)環境DNA/RNA分析等を活用して調査地域の代表的な水生生物の質(種類)と量(分布)の推定精度を高める手法を開発し、市内の河川・水路における環境DNA/RNA調査を行う。次に、2)その調査結果を市民に提供することで、地域の水辺の価値評価に与える影響をアンケート調査によって評価する。その結果をもとに、3)水辺の価値を高められる水生生物情報提供手法を提案することを目的とする。2023年度は以下の成果を得た。 (1)環境DNA/RNA分析の推定精度向上手法の開発 過去の水生生物調査の結果、ならびに下記(2)の住民アンケート調査にて得られた関心のある水生生物の種類の結果をもとに、環境DNA/RNA調査を行う上での地点ならび評価対象種の選定を行った。調査地点は、「調査対象地域の住民にとって身近な河川」の観点から川越市内の数河川を選定した。あわせて、特に環境RNA分析の技術的検討を行い、分析方法自体はほぼ構築できた。 (2)水辺の価値を高められる水生生物情報提供手法の提案 対象地域を流下する新河岸川・入間川流域を対象として、水辺の利用状況・意識ならびに本流域に生息する魚類(30種)の関心度を問うアンケート調査を行った(方法:調査会社モニター用いたWebアンケート、調査期間:2023年11月6日〜13日、有効回答数:1000)。30種のうち、2種の魚類の関心度を5段階で相対的に問う質問の回答結果をもとに、一対比較法にて魚類の相対的関心度を評価した結果、ニホンウナギ、アユ、メダカが上位に、オオクチバス、コクチバス、カムルチーが下位となることを明らかにした。魚類の相対関心度は、保全の優先度を反映したものとなっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
評価対象地域に生息する魚類の情報収集が円滑に進んだことで、予定通り、魚類への関心度を問う住民アンケート調査を実施することができた。 環境DNA/RNA分析の特性を把握するため、両者向けの採水を川越市内河川で実施すると同時に、詳細な捕獲調査を実施した。その結果、魚類のDNA、RNA各分析および捕獲調査の全てのデータが得られた。現在、これらを比較解析中であり、それぞれの調査手法の特性を整理するとともに、2年目の調査研究に反映させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)環境DNA/RNA分析の推定精度向上手法の開発 令和6年度は、令和5年度に設定した調査地点において、同年度に整理した知見を元に環境DNA/RNAおよび捕獲調査を行い、その結果をもとに対象地域における生物種と分布を整理する。分析対象は、住民による魚類の相対関心度の評価で上位・下位となった種を想定する。令和7年度には、得られた調査結果を元に、既存の環境DNA分析/環境RNA分析/生物調査の結果の総合解析を行い、各手法の特徴を整理するとともに、実際の運用面からの妥当性の検証を行う。 (2)水辺の価値を高められる水生生物情報提供手法の提案 令和6年度は、対象流域における環境DNA/RNA分析の調査から得られる、対象地域の水生生物の種類と分布の情報について、提供有無ならびに提供内容の違いによる水辺の価値評価の差をアンケート調査によって統計的に評価し、水生生物の情報が水辺の価値評価に与える影響を定量的に明らかにする。令和7年度には、それらの情報をもとに、水辺の価値評価向上に資する情報の提供内容ならびに提供方法を提案し、コンテンツ(Webページ、冊子等)を制作する。そのコンテンツを用いた市民ワークショップを開催し、提案内容の実践を図るとともに、本研究で提案内容の有効性の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
Webアンケート調査において、委託費が想定を下回ったこと、環境DNA/RNAの技術検討にかかる分析消耗品の使用量が想定を下回ったことにより、主に「その他」について差額が生じた。次年度使用額(B-A)については、それぞれ、令和6年度にそれぞれWebアンケート調査、分析消耗品等で執行する予定である。
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