研究実績の概要 |
本研究の目的は、洪水後の新技術導入にともなう農業変容について、他州と比べても歩みが遅いインド・アッサム州に固有の社会・生態的要因を、すみやかに雨季稲作から乾季稲作へ移行したバングラデシュの事例との比較を通して、明らかにしようというものである。 令和5年度は、4月末から5月、翌2月末から3月の2度、インド・アッサム州を訪問し、複数の村落で農家から聞き取り調査を実施した。西部のナルバリ県では、ブラマプトラ川に近く、相対的に低い場所にある耕地で、2022年の洪水後の乾季にボロ稲が導入されたことが分かった。その際に、被災者支援の一環として行政から稲のハイブリッド品種・灌漑用管井戸が支給され、近隣のムスリム移民から栽培技術に関する知識が、オホミヤと呼ばれる在来ヒンドゥー教徒に提供されたことも明らかになった。 しかし、乾季のボロ稲栽培を含む農業変容が進んでいる地域は、ムスリム移民の居住地を除くとアッサム州全体の中では限定的で、ほとんどの地域では乾季の耕地では作物が栽培されていない。雨季に栽培される稲の収益性が見込めない中で、農家は乾季の生業で現金収入を稼ぐ必要がある。ボロ稲の導入が容易でない地域では、魚養殖やブロイラー養殖など、作物栽培以外の収入源を模索する農家もみられ、徐々に生業が多様化していることが示唆された。 また、国内ではアッサム州とバングラデシュの現地新聞(Assam Tribune, Sentinel, Daily Star, Financial Express)の記事をウェブサイトから収集して、災害後の新技術の導入状況に関する分析を進めた。記事の内容について、次回の現地調査で確かめる予定である。
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