研究課題/領域番号 |
23K11657
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
福井 令恵 法政大学, キャリアデザイン学部, 准教授 (50724035)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 移行期社会 / ブレグジット / 記憶 / 文化活動 / 観光 |
研究実績の概要 |
本研究課題1年目に当たる本年は、主に以下の調査・研究を行った。 1)本年は、北アイルランド紛争の和平合意締結からちょうど25周年にあたる年であり、それに合わせてロンドン(イングランド)の帝国戦争博物館で、北アイルランド紛争に関する企画展示(Northern Ireland: Living with the Troubles)が開催された。戦争博物館での紛争経験の提示の仕方(展示の内容・構成や組み立て)の調査・分析を行った。また、北アイルランドのアルスターミュージアムの「The Troubles and Beyond」展についての調査・分析も行った。 2)グラスゴー(スコットランド)とダブリン(アイルランド共和国)を訪問し、調査を行った。グラスゴーは歴史的に北アイルランドとの関わりが深く、市内にアイルランド移民の居住地区があり、壁画を描く活動が行われているので、現在のグラスゴーとベルファスト(北アイルランド)の文化的な活動に関するつながりを探ることを目的に、グラスゴーの壁画を調査した。ダブリンでは、 National Museum of Irelandで行われた「Imaging conflict: photographs from revolutionary era Ireland 1913-1923」展と「Rainbow Trail」展を視察した。 3)ベルファストの壁画の現状と変化について、シャンキル・フォールズ地区を中心に調査を行った。 4)移動、集合的記憶に関する理論的動向をおさえるために文献を収集し論点を整理した。 今年度行った調査のうち、帝国戦争博物館とアルスターミュージアムの展示(紛争表象)に関する論文を発表した。また、和平合意締結後25周年の節目の現在のベルファストの集合的な記憶について、アイルランド協会公開講座にて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた2回のフィールド調査は、物価の高騰・円安および所属大学の業務上の事情から、1回のみの実施となった。しかし、和平合意締結25周年に当たる現在の状況について中間的な報告を日本アイルランド協会の研究会(公開講座)で発表し、学会会報第115号(2023年10月発行)の巻頭ページに寄稿した。またイングランドと北アイルランドの代表的なミュージアムでの紛争表象に関する論文を発表した。以上の点から、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ベルファストにあるコミュニティ運営ミュージアムの展示・活動の調査を行う予定である。 また、これまでの調査で、東ベルファストの市民グループが、コミュニティの抱える課題を克服するために、長年実施してきた文化活動についての情報を得ることができた。活動のリーダー的人物と面識を得ることができたので、こうしたグループの活動について、今後さらに理解を深めていきたい。 壁画の経年変化についての調査は引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた年2回のフィールド調査は、円安の影響と物価高による費用の高騰のため、1回とし、代わりに北アイルランドに加えて翌年度に予定していたグラスゴー(スコットランド)およびダブリン(アイルランド共和国)での調査を行った。その結果、少額ながら繰越金が生じた。
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