研究課題/領域番号 |
23K11661
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
桐山 恵子 同志社大学, 文学部, 教授 (50432597)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 文学的観光 / Literary Tourism / マリーコレリ / Marie Corelli / チャールズディケンズ / Charles Dickens |
研究実績の概要 |
今年度は幸いにしてここ数年、感染病が海外渡航に及ぼしてきた支障がおよそなくなったため、国際学会での研究発表が可能となった。よって、これまでから継続して取り組んできた19世紀イギリス小説を主要な対象とするLiterary Tourism(文学的観光)研究において、国際学会発表の実現が可能となり、一定の研究成果を広く発表することができた。 具体的に述べると、2023年6月20日~24日にかけてシンガポールで開催された第16回International Conference on the Short Story in English(於:Nanyang Technological University)で以下のタイトル:"A Comparison of Goblins in Marie Corelli’s and Charles Dickens' Christmas Stories"で研究発表を行った。当発表では、マリー・コレリおよびチャールズ・ディケンズの小説におけるゴブリン表象の違いを扱った。またディケンズの"A Christmas Carol"との影響関係が明らかなコレリの短篇"The Strange Vigitaiton"では、主人公がガイド役のゴブリンとともに都市ロンドンを見てまわる様子が描かれており、都市観光小説としても読める点を指摘した。 なお本研究発表の内容は来年度に当学会から出版する共著においても公表される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本来であれば2021年に開催されるはずであった第16回The International Conference on the Short Story in English がようやく実施され、研究発表"A Comparison of Goblins in Marie Corelli’s and Charles Dickens' Christmas Stories"を行うことができた。そのため本年度の研究進捗状況は、おおむね順調に進展している、と判断できる。本発表では、マリー・コレリとチャールズ・ディケンズのクリスマス小説を扱い、コレリ小説には、従来から指摘されていた改心をテーマにした典型的なクリスマス小説という側面だけでなく、クリスマスの都市観光小説という側面も見出せることを指摘した。
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今後の研究の推進方策 |
ヴィクトリア朝の大ベストセラー作家であり、さらにシェイクスピア生誕地であるストラトフォード・アポン・エイボンの観光産業促進に大いに貢献したにもかかわらず、マリー・コレリが果たした業績は、今日、充分には評価されていない。文学的観光の観点から彼女を研究する意義は少なからずあると考えられるため、コレリ研究に関しては引き続き精力的に継続していく予定である。 またこれまでのLiterary Tourismでは湖水地方などに代表されるように田舎を対象としたものが目立ったが、都市における文学的観光にも今後着目していきたい。たとえばロンドンを背景にした小説の主人公たちが残した痕跡を、現在のロンドンをめぐって探す文学的観光ツアーのありようなどにも研究対象を広げていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会発表のための海外渡航費が当初の見積もりより下回ったために次年度使用額が生じた。来年度においても継続的に海外での調査(とくにStratford-upon-AbonにあるShakespeare Instituteでの資料調査)を行う予定があり、さらにアイルランドで開催予定の17th International Conference on the Short Story in Englishでの発表予定があるため、そちらに充当したいと考えている。
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