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2023 年度 実施状況報告書

公私領域の境界線を問う―政治・戦争・福祉に関わるドイツ市民女性運動の思想と実践

研究課題

研究課題/領域番号 23K11687
研究機関大阪公立大学

研究代表者

内藤 葉子  大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 教授 (70440998)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワードドイツ市民女性運動 / 第一次世界大戦 / 公私領域 / ケア / 国民女性奉仕団 / 女性兵站支援員 / 国際主義 / 平和主義
研究実績の概要

本研究は、20世紀前半のドイツ市民女性運動を担った女性たちの思想と実践を政治・戦争・福祉に焦点を定めて検討し、それによって公私の境界線の生成・維持・変動の様相を解明しようとするものである。2023年は研究計画に従い、以下の点を中心に進めた。
第一に、所有文献・資料の整理、先行研究の確認を行い、国内での資料収集に着手した。その読解を進めながら、さらに必要な資料や調査項目を洗い出した。
第二に、女性兵士をテーマにした講演会を企画立案した。女性兵士をめぐる現代的状況と思想的・社会的背景について報告を行い、その内容を紀要に寄稿した。
第三に、戦争遂行システムがジェンダー・ポリティクスにもとづいて女性たちのケア実践をいかに利用するのかという観点から、第一次世界大戦期のドイツ市民女性運動の活動を分析し、この内容を学会で報告した。
第四に、この報告を加筆修正したうえで論文化した。内容としては、市民女性運動の統括組織であるドイツ女性団体連合(BDF)が戦争協力と女性の動員をどのような意図や関係性のもとで行ったか、総力戦体制が女性たちの主体的なケア実践をいかに利用して維持されるものであったか、戦争の長期化により生存への脅威とケアの破綻がどのように現れたか、その脅威に対して国際的連帯を模索した女性たちが軍事主義に抵抗する思考をいかに生み出していったかを考察した。また女性兵站支援員の存在にも注目し、第一次世界大戦が公私領域の境界線や性別二元論的な性規範を大きく揺さぶる戦争であったことを確認した。さらに福祉事業を展開したドイツのA・ザーロモンとアメリカのJ・アダムスらの戦争に対する態度を検討し、戦争と福祉に関わる研究の糸口を見出した。
第五に、公私二元論を培ってきた西洋政治思想を、フェミニズムとケアの倫理の観点から批判的に考察する内容で学会報告を行う予定であり、現在その準備を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2023年度は、研究実施計画書に照らして本研究課題に関する資料・文献を国内で収集することができた。講演会および学会で本研究内容に関する報告を行い、その内容を紀要に寄稿した。またその内容を加筆修正のうえ国内雑誌への投稿も行った。研究実施計画の2023年度の予定よりも早く作業を進め成果を得ているため、当該区分を選択した。

今後の研究の推進方策

本研究の今後の推進方策については、基本的には研究実施計画に従って進めていく。2023年度に収集した資料の読解を急ぐとともに、必要な資料の収集も継続して行う。休暇を利用して渡独し、図書館や公文書館で国内では入手不可能な資料の収集および調査を行う。帰国後、資料と調査結果を整理し読解作業に入る。研究に関連した内容での学会報告や研究会報告を行い、報告内容を論文化したうえで学会誌や紀要への投稿を試みる。ただし、平行して進める他の科研費研究等との関係により、計画を修正せざるをえない可能性もある。

次年度使用額が生じた理由

出張費を計上していた学会や研究会にオンラインで参加するなど、予定の変更が生じた。人件費は別の予算を充当することができた。これらの予算は来年度の出張費、文献資料収集などの物品費として予算執行を行う予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 女性兵士が問いかける地平 ―エチオピア、ルワンダ、ソ連、ウクライナの事例から― 趣旨説明2024

    • 著者名/発表者名
      内藤葉子
    • 雑誌名

      第27期女性学講演会

      巻: 27 ページ: -

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 女性兵士が問いかける地平―エチオピア、ルワンダ、ソ連、ウクライナの事例から―趣旨説明2023

    • 著者名/発表者名
      内藤葉子
    • 学会等名
      大阪公立大学女性学研究センター第27期女性学講演会/第32回日本ナイル・エチオピア学会学術大会・シンポジウム(共催)
  • [学会発表] 何が戦争を支えるのか―ジェンダー、ケア、女性―2023

    • 著者名/発表者名
      内藤葉子
    • 学会等名
      唯物論研究協会第46回研究大会
    • 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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