研究課題/領域番号 |
23K11717
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
東 晃太朗 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光推進室, テニュアトラック研究員 (70721249)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | X線吸収分光 / HERFD-XAFS / in-situ |
研究実績の概要 |
高エネルギー分解能蛍光検出X線吸収微細構造(HERFD-XAFS)法は、測定対象の詳細な電子状態を得ることが可能な計測手法であるが、現状では一つのスペクトルを取得するためには、ある程度の長い時間が必要になっている。そこで本研究課題では、HERFD-XAFSにクイックXAFS(QXAFS)法を組み合わせ、高速かつ連続で計測することでそのスペクトルの時間変化を観測することが可能になる、高時間分解能HERFD-QXAFS法の構築を行い、数秒から十数秒のうちに反応が進むような一過性反応に対して、in-situ/operando環境下でその反応メカニズムの観測を可能にすることを目的としている。 本年度は、これまで用いてきた2D光子計数型検出器から、蛍光X線のフォトン到着時刻計測型の光子計数型検出器の導入を行い、それによって検出速度の向上を図った。それによって最大時間分解能は50 ms/スペクトルまで向上した。 また、安定して測定が可能なペレットタイプの試料を保持できるバッチセルを改良し、それを用いてガス導入時のスペクトルの時間変化を計測した。その結果、Pt担持触媒に対してPt L3端 HERFD-XAFSのスペクトル変化を100 msの時間分解能で取得することに成功した。 Pt L3端以外の吸収端に対しても時間分解HERFD-QXAFS計測が可能かを検討し、Au L3端、Ni K端に対して参照試料に対するHERFD-QXAFS計測を行い、時間分解能100 msでの計測に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定してた新規バッチセルの開発は、既存の蛍光法用バッチセルを改良することで使用可能となり、実試料を用いたin-situ計測までを行うことができた。さらにPt L3端以外の吸収端についてもHERFD-QXAFS計測が実施可能かを検討した結果、Au L3端およびNi K端についても実施が可能であることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
他の吸収端でも実施可能か検討した際、Co K端およびFe K端においては利得強度が見積もり値より少なかった。これは試料-アナライザ分光結晶-検出器間に存在する空気パスによって、強度の減少が起きたと考えられる。これを改善するためのHe置換パスを新規導入することで、さらなる計測可能元素拡大が可能となると考えている。 またこれまでに得られた結果について、理論計算の側面からも評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規バッチセルを開発する予定だったが、既存のセルの改良で当初予定していた実験を実施することができた。その分の残資金を用いて、新たに分かった空気パス部分の改良を次年度に行う。
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