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2023 年度 実施状況報告書

大規模水害を対象としたデータ駆動型防災デジタルツインシステムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 23K11728
研究機関文教大学

研究代表者

川合 康央  文教大学, 情報学部, 教授 (80348200)

研究分担者 池辺 正典  文教大学, 情報学部, 教授 (10453440)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワードゲームエンジン / オープンデータ / シミュレーション / 地理情報システム / 可視化 / 都市計画 / 防災計画 / 水害
研究実績の概要

本研究は,大規模自然災害に対する減災の検証を行うための,データ駆動型デジタルツインの構築を行うものである.デジタルツインは,現実空間に存在する物体や情報を,仮想空間上に複製することによって,検証・分析が可能となるものである.本システムでは,市区レベルの広域都市空間を対象として,デジタルツインをモデリングし,シミュレーションを行い,結果をわかりやすく可視化する.開発環境として,統合開発環境であるゲームエンジンを利用し,また,オープンデータを活用することによって,誰もが使いやすい安価で高品質な都市のデジタルツイン基盤を構築する.
令和5年度は,広域都市空間モデルを仮想空間上に再現し,様々な都市情報を重層的に可視化するシステム基盤を構築した.モデリングでは,国土交通省のオープンデータ化プロジェクトPLATEAUやOpenStreetMap,Google Maps Platformなどの3次元都市モデルデータを用い,これをゲームエンジン上に取り込み,様々なインタラクションを施すこととした.
また,GISを用いた避難所可視化システムとして,地理情報と指定避難所をWebGLによって3D表示を行い,ブラウザ上で動作するシステムの開発を行った.さらに,道路ネットワークデータを用い,経路探索による等時線によって,広域避難所などの公的施設のカバー範囲を計算し,ブラウザ上で可視化するシステムの開発を行った.
加えて,位置情報取得と避難行動ログの取得を行うシステムの開発を行った.これは,大規模自然災害発生時における自律的な避難行動を支援することを目的とし,SNSを用いて現地の被害状況をリアルタイムで収集し,ARと2Dマップ上に表示させるWebベースのシステムとして開発した.また,仮想空間上での避難行動等について,生成AIを用いて自然言語で行動ログを要約するシステムの試作を行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

令和5年度は,都市デジタルツインの基盤システムを開発した.開発環境として,ゲームエンジンUnityと地理データプラットフォームCesiumを用いた.地理情報として,国土交通省PLATEAUの都市モデルを利用し,ゲームエンジンに読み込むため,PLATEAU SDK for UnityとCesium for Unityを用いた.PLATEAU SDK for Unityは, CityGMLデータを利用するためのSDKである.ダウンロードした建物,道路,地形のモデルをゲームエンジンにインポートした.ローカル環境で動作するが,大規模データを扱うため,処理負荷が高い.Cesium for Unityは, CesiumをUnity上で扱うものである.本システムでは,クラウド上のPLATEAU 3D Tilesモデルを市区単位で読み込んだ.都市モデルを表示範囲に応じて読み込むため,軽量に動作するが,ネットワークへの接続が必要である.
また,GISを用いた可視化システムとして,全国の避難所と災害種データに基づいた,可視化基盤を開発した.大規模データを取り扱うため,Go言語とNuxt.jsを用いた一括管理を行った.さらに, OpenStreetMapの道路ネットワークをWebGLによって可視化し,ダイクストラ法で求めた避難所等への最短距離を可視化した.
災害発生時に利用するシステムとして,SNSを用いて被害情報をリアルタイムで収集し,避難所のデータと結合させた避難補助システムの開発を行った.ARと2Dマップを活用し, Webベースのシステムとして開発を行った.また,仮想空間上でのユーザ行動について,LLMを用いた評価と要約の自然言語による出力の試作を行った.

今後の研究の推進方策

都市のデジタルツインプラットフォームシステムを基盤に,水害の時系列的な浸水状況の再現と,避難エージェントによるシミュレーションを行い,防災計画に資するデータの取得を行うこととする.都市モデルには,オープンデータとともに,ドローンや全天周カメラなどを用いた画像から写真測量を行い,詳細な都市空間モデルを都市のオープンデータと組み合わせ,LODによる表示切替を行うこととする.浸水状況については,流体シミュレーションとして,格子法による時系列を踏まえた水位の再現と,道路ネットワークデータを組み合わせ,避難所への最短経路の変化についても検証する.また,自律的に避難する避難行動エージェントの経路探索アルゴリズムについては,A*アルゴリズム等を用いて,避難所への探索精度を効率化する.さらに,自己学習型避難エージェントを用いることによって,ルート変更に応じた経路選択や,エージェント間の情報共有による避難行動についても検証する.これらエージェントを,市街地に大規模に分散させたシミュレーションを行い,市街地における被災推定箇所を可視化する.加えて,避難所の設定や道路ネットワークの通行可否や車両避難の可否等を検討することで,災害時における具体的な避難誘導のあり方についても検証する.可視化については,HMDを用いたVRによる避難シミュレーションとともに,空間再現ディスプレイを用いた都市全域の鳥瞰視点による可視化の検証を行う.これらの技術を組み合わせ,様々な都市情報を重層的に可視化することによって,都市の利便性向上やまちづくりに資するシステムへと展開していくこととする.

次年度使用額が生じた理由

令和5年度は,市区単位の広域都市空間モデルを仮想空間上に再現し,様々な都市情報を重層的に可視化する都市デジタルツインシステム基盤を構築した.開発にあたり,オープンソースソフトウェアとオープンデータの利活用可能な範囲が広がったことにより,低廉な開発環境を構築することが可能であった.一方,導入を計画していたグラフィックボード等の情報処理や可視化のためのハードウェアについて,原材料不足と需要増による納期の大幅な遅延や為替相場による価格高騰が発生し,当該年度での執行を見送ることとなった.次年度,早期に適正なハードウェアを選定し,速やかに調達を行うこととする.

  • 研究成果

    (25件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (18件)

  • [雑誌論文] 位置情報による犬の散歩記録システムと犬の視点動画について2024

    • 著者名/発表者名
      村山栞菜,川合康央
    • 雑誌名

      インタラクション論文集

      巻: 2024 ページ: 642-646

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ロールプレイングゲームにおけるコマンドバトルの抱える問題とその解決手法の提案2024

    • 著者名/発表者名
      鈴木克磨,川合康央
    • 雑誌名

      インタラクション論文集

      巻: 2024 ページ: 1482-1485

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] オープンデータPLATEAUとゲームエンジンUnityを用いた都市情報ビジュアライゼーションシステムのデザイン2023

    • 著者名/発表者名
      川合康央
    • 雑誌名

      Designシンポジウム講演論文集

      巻: 2023 ページ: 40-45

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 道路ネットワークデータを用いた公的施設の可視化デザイン2023

    • 著者名/発表者名
      張付新,川合康央
    • 雑誌名

      Designシンポジウム講演論文集

      巻: 2023 ページ: 233-236

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 位置情報と拡張現実を活用した実空間に対応したゲーム2023

    • 著者名/発表者名
      鈴木克磨,川合康央
    • 雑誌名

      エンタテインメントコンピューティングシンポジウム論文集

      巻: 2023 ページ: 308-312

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ライブカメラを用いた人流可視化システムの提案2023

    • 著者名/発表者名
      西海大愛,川合康央
    • 雑誌名

      エンタテインメントコンピューティングシンポジウム論文集

      巻: 2023 ページ: 341-344

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ゲームエンジンを用いたドライビングシミュレーションシステム2023

    • 著者名/発表者名
      武谷龍,川合康央
    • 雑誌名

      エンタテインメントコンピューティングシンポジウム論文集

      巻: 2023 ページ: 348-353

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 位置情報と動画による犬の散歩記録システムの提案2024

    • 著者名/発表者名
      村山栞菜,川合康央
    • 学会等名
      情報処理学会
  • [学会発表] 時系列を守った行動要約とその評価を行うための大規模言語モデルに向けたログ作成手法の提案2024

    • 著者名/発表者名
      鈴木克磨,川合康央
    • 学会等名
      情報処理学会
  • [学会発表] Unityを用いたドライビングシミュレーターの提案2024

    • 著者名/発表者名
      武谷龍,川合康央
    • 学会等名
      情報処理学会
  • [学会発表] 川崎市を対象とした氾濫シミュレータの開発2024

    • 著者名/発表者名
      北山若葉,川合康央
    • 学会等名
      情報処理学会
  • [学会発表] GISを用いた避難所可視化システムの提案2024

    • 著者名/発表者名
      西海大愛,川合康央
    • 学会等名
      情報処理学会
  • [学会発表] 災害時における避難状況の情報管理システム2024

    • 著者名/発表者名
      安部絢香,川合康央
    • 学会等名
      情報処理学会
  • [学会発表] 大規模自然災害発生時における被害情報の収集と反映による避難補助システム2023

    • 著者名/発表者名
      川合康央,齊藤真生,池田岳史,益岡了
    • 学会等名
      日本デザイン学会
  • [学会発表] 広域道路ネットワークデータの等時線を用いた公共交通計画のための可視化手法の提案2023

    • 著者名/発表者名
      張付新,川合康央
    • 学会等名
      日本デザイン学会
  • [学会発表] 大規模3次元都市空間モデルを用いた都市情報ビジュアライゼーションシステムの提案2023

    • 著者名/発表者名
      川合康央,池田岳史,益岡了
    • 学会等名
      日本デザイン学会
  • [学会発表] 画像認識を用いた駐輪場管理業務支援システムのデザイン2023

    • 著者名/発表者名
      西海大愛,坂内蓮,桐生優和,鈴木大翔,福嶋穂倖,中川瞳,川合康央
    • 学会等名
      日本デザイン学会
  • [学会発表] 都市部における交通事故防止のためのドライビングシミュレーションシステムの開発2023

    • 著者名/発表者名
      武谷龍,川合康央
    • 学会等名
      日本デザイン学会
  • [学会発表] 位置情報と拡張現実を用いたコミュニケーションインターフェースの提案2023

    • 著者名/発表者名
      鈴木克磨,川合康央
    • 学会等名
      ヒューマンインタフェース学会
  • [学会発表] VR を用いた川崎市の氾濫シミュレーションシステム2023

    • 著者名/発表者名
      北山若葉,川合康央
    • 学会等名
      ヒューマンインタフェース学会
  • [学会発表] 愛犬のVR散歩記録システムの提案2023

    • 著者名/発表者名
      村山栞菜,川合康央
    • 学会等名
      ヒューマンインタフェース学会
  • [学会発表] 非言語音声を用いたゲーム操作インターフェースの提案2023

    • 著者名/発表者名
      福嶋穂倖,川合康央
    • 学会等名
      ヒューマンインタフェース学会
  • [学会発表] Unity と Houdini による都市交通シミュレーションシステム2023

    • 著者名/発表者名
      武谷龍,川合康央
    • 学会等名
      ヒューマンインタフェース学会
  • [学会発表] ライブカメラを用いた人流可視化手法の提案2023

    • 著者名/発表者名
      西海大愛,川合康央
    • 学会等名
      ヒューマンインタフェース学会
  • [学会発表] LINEを利用した災害時避難支援システムの開発と評価2023

    • 著者名/発表者名
      川合康央,齊藤真生,池田岳史,益岡了
    • 学会等名
      日本建築学会

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公開日: 2024-12-25  

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