本研究は、日本の大学における中央図書館、そして部局図書室における蔵書分類がどのように各学問の体系化の中に位置づけられるのかを部局間や大学間などさまざまなレベルで比較しつつ歴史的検討を行うものである。本年度は、その最初の一歩として、以下の2点を中心に研究を行った。 1. 東京大学の工学部の旧各学科図書室における独自分類の収集を通じて研究を行った。旧各学科図書室を実際に訪問し、古くから残されている台帳や蔵書のラベルなどの検討を行いつつ、それぞれの独自分類成立の背景にある分野や学科の状況について主に文献を通じて調査を行った。東京大学工学部図書室の独自分類は、全てについて明らかにできていないが、教官が独自に考案したものなど多様なルーツがあることが明らかとなった。 2. 図書館、特に大学図書館において独自分類を作成するということがどのようになされ、どのように位置付けられてきたのか、という歴史的および理論的研究を行った。だが、日本十進分類法やデューイ十進分類法といった一般分類法についてはある程度の議論が見られたが、大学図書館の独自分類についてはほとんど検討はされていないことが明らかとなった。そこで、そもそも分類するということはどのようなことなのか、図書館情報学だけでなく、哲学や生物学における議論も参照しつつ、検討を行った。図書館における分類という行為について、学問や生物における分類について相違点と類似点が明らかとなった。
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