研究課題/領域番号 |
23K11779
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
斎藤 進也 立命館大学, 映像学部, 准教授 (70516830)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 仮想展示 / バーチャル展示 / バーチャルミュージアム / インフォグラフィックス / メタバース / デジタルヒューマニティーズ |
研究実績の概要 |
初年度となる2023年度は、「学術成果の発信のための仮想展示環境に関する研究」というテーマを進めていく上での基盤づくりに力点を置き、具体的な課題の設定を行った。そして、バーチャルミュージアムの先行研究や既存事例をレビューしつつ、学術成果の発信のための仮想展示環境の構築について具体的なプランニングを行った。コロナ禍以降、従来対面で実施されていた展示をサイバー空間で仮想的に代替する取り組みは多くみられる。それらは基本的に、博物館や美術館などの現実空間における展示を仮想空間内に再現するという視点を持つものが多い。この点を考慮した上で本研究では、単純に現実の博物館や美術館等をモチーフにするのではなく、デジタル表現だからこそ可能なオリジナリティのある閲覧支援をいかに組み込むことができるかに力点を置くことで、既存の取り組みとの差別化を図ることとした。またこの方針を踏まえ、Epic Game社が提供するゲームエンジンUnreal Engineを用いたプロトタイプ制作を行った。プロトタイピングにおいては、現実の博物館等の展示を模した「ギャラリーモード」と仮想空間だから可能なインタラクティブな図的表現からなる「インフォグラフィックモード」という2つのモードを実装し、それぞれの長所・短所について考察した。また、このプロトタイプについては、立命館大学アート・リサーチセンター(ARC)の成果報告会にて発表し、フィードバックを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「学術成果の発信のための仮想展示環境に関する研究」というテーマのもとで、具体的にどのような課題を設定し、開発や調査を行っていくかが明確になり、初年度に必要な研究の土台づくりができた。学術成果の発信のための仮想展示環境をどのように構築していくかという点について、既存のバーチャルミュージアム構築の調査をすることで、どのような取組みを行えば豊かなオリジナリティを持つ成果を導出できるかを検討した。そして、本研究では、デジタル表現だからこそ可能なオリジナリティのある閲覧支援をいかに組み込むことができるかに力点を置くことで、既存の取り組みとの差別化を図る方針を策定した。さらにこの方針を踏まえて、システム開発の方向性についても具体化するとともに、プロトタイピングに着手した。システム開発の方向性として、CG空間だからこそ可能なインフォグラフィックス表現の開拓に力点を置くこととし、プロトタイピングにおいては3Dタイムライン表現や3D系統樹表現など汎用的に活用できる表現の実装を行った。加えて、Epic Gamesによる人気ゲームタイトル「FORTNITE」のメタバース的側面に着目し、「FORTNITE」上に「島」と呼ばれる独自のメタバース空間を用意し、そこで仮想展示を行うための機能設計とその実装を行った。
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今後の研究の推進方策 |
推進の方策として、先にのべた3Dタイムライン表現や3D系統樹表現などのインフォグラフィック開発、および、独自のメタバース空間の開発と運用に力点を置き、2024年度の研究活動を進めていく。この方針に関連し、ゲームAIを活用した仮想展示補助機能について検討することも重点的課題のひとつとする。とりわけ、NPC(Non Player Character)の開発技術は、仮想展示におけるナビゲーターの役割を効果的に果たしうると考えられるため、積極的に導入を検討し、その有用性について調査を進める予定である。研究成果については、情報処理関連、デジタル・ヒューマニティーズ関連、そしてゲームスタディーズ関連の学術領域を中心に、学会発表などを通じてアウトプットしていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会の参加や海外での調査を予定していたが、為替の影響や当該国の物価高などから当初の目算を超えるコストがかかることが分かったため課題初年度での海外出張は見送ることとし、計画を再検討するとともに、国際状況を一旦みることにした。国際的な観点での活動は必要であるため、次年度は、何らかのかたちで、海外での取組みを行う予定である。
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