研究課題/領域番号 |
23K11792
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
井藤 寛志 愛知大学, 文学部, 教授 (20464141)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 自動的模倣 / ミラーニューロン・システム / 同調 |
研究実績の概要 |
令和5年度は主に、他者が腕あるいは脚を使って連続的にキーを押す系列動作を観察し遂行する課題と伝統的に使用されている指のタッピング課題とを用いて、運動への無意識的な模倣とそれを支える脳神経基盤を検証できる実験方法の確立を目指した。研究の具体的な内容を以下に示す。 まず課題をより精緻化するために、複数の実験協力者を対象として、上記の動作をモーションキャプチャーによって計測し、それらの協力者が手や脚を動かし始めるまでの時間を反応潜時、および動きの軌跡分析した。その結果に基づき、ヒトが自然に行った条件とその動作を画像編集によって機械的な動作に変えた刺激材料を作成中である。自然な動作とは対象のキーに向けて指の速度が増しキーに到達する前に減速するというものであり、この動作を等速運動に変えた刺激を作成している。また、これまで統制条件として用いてきた光点(ライトの点滅)を使用して動作の順序を教示する課題の問題点を修正した。具体的には、他の研究者から、動作を暗示しない刺激は脳内における動作表象の活性化とその競合を生じさせる可能性が少ないとの指摘があり、この問題を解決するために系列動作を物体が上下する運動によって教示する課題に変更した。これら課題の変更と刺激材料の作成には、新たなスキルの獲得が必要であり、それらのプログラミングやデータ分析のための基礎的な講習を受講し、自らの実験スキルの向上に努めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画書において令和5年度に実施予定であった観察遂行課題の改良を予定通り実施することができた。よって、研究は概ね順調に進展していると考えられる。ただし、計画の段階では課題中の刺激材料をCG化するなどを考えていたが、モデルとなる人物の確保に当初の予定よりも大幅に時間を要した。そのため、刺激材料の完成が計画よりも遅れる事態となった。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、観察遂行課題の実験手法を完成させた後、運動への模倣中の脳活動を計測する実験を実施する。まずは必要最小限の参加者(20名)で予備実験を行う。その予備実験の結果に基づいて不都合な部分の改良を行い、本実験の準備を進める。fNIRS装置はレンタルする。そして、令和7年度には、観察遂行課題を対面で実施し、fNIRS装置の計測チャンネルを2名の頭部に分割して配置し、二者間で模倣している時の脳活動を同時計測する。これにより、単独の脳活動では知ることが難しい複数人の脳の同期活動を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では課題の改良に時間を要し、それらの課題を使用した実験の実施が困難であった。そのため、それらの研究成果を発表する機会がなく、出張のための旅費が当初計画予算を下回ることになった。次年度以降は、研究成果の発表のための旅費に充てることを予定している。
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