研究課題
大脳皮質は離れた位置にある複数の領域が協調して活動し、デフォルトモードネットワーク(DMN)など、いくつかの大規模な「機能的ネットワーク」を形成している。これらのネットワーク動態が意識レベルの違いや精神疾患の病態を反映することが知られているが、その神経基盤の生理学的基盤についてはほとんど分かっていない。本研究では、ヒトの脳ネットワークのモデルとして高度に大脳皮質が分化したマカクザルを対象に、DMNのハブ領域の局所神経活動の変化が解剖学的結合を介しどのように機能的ネットワークを変化させるかを明らかにし、機能的ネットワークと解剖学的結合との関連を理解することを目的とした。初年度は、2種類の化学遺伝学的手法を用いて、DMNの活動抑制が可能なモデルザル2頭の作成を試み、神経活動変容に伴うMRI信号(BOLD信号)変化を確認した。PET画像より想定通りの領域(後部頭頂葉)にDREADDsが発現されていることを確認できた。また後部頭頂葉にhM4Diを発現した個体においては、DCZ投与後約4分でVehicle投与に比してPPC内のBOLD信号が低下し(p < 0.001)、少なくとも50分間はその効果が持続した。また、外側前頭前野にPSAM4を発現した個体においては、uPSEM817投与後約19分でdlPFC内のBOLD信号が低下し(p < 0.001)、その効果は50分間持続した。以上のことから2種類の化学遺伝学手法ともに、神経活動抑制がおこっていると想定され、今後のDMN変容が期待される。
2: おおむね順調に進展している
おおむね順調に進展している。当初の予定通り、マカクサル2頭について神経活動抑制モデルが作成でき、来年度以降ネットワーク変容および解剖学的結合との関連について評価可能であると考えられる。
今年度は、機能的結合変容に伴う解剖学的結合の背景を探索するためのモデル動物2頭の作成を行った。次年度以降は、更に2頭のモデル動物を作成するとともに、機能的MRIによるネットワーク変容を計測するとともにPET画像から解剖学的結合を明らかにする。またそれらデータの関係性について導く。
本年度のモデル動物作成及びMRI撮像のほとんどは共有物品の使用により達成できた。次年度予定の新規モデル動物、MRI撮像に使用する。
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Journal of Neuroscience
巻: 43 ページ: 6619-6627
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PLOS Biology
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