研究課題/領域番号 |
23K11799
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加藤 祐次 北海道大学, 情報科学研究院, 助教 (50261582)
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研究分担者 |
清水 孝一 北海道大学, 情報科学研究院, 名誉教授 (30125322)
松村 健太 富山大学, 学術研究部医学系, 講師 (30510383)
橋本 守 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (70237949)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 血中中性脂肪濃度 / 後方散乱光 / 空間分解計測 / 無侵襲 / モンテカルロ・シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究の大きな目標である、血中中性脂肪濃度の無侵襲光学計測の実現のため、計測手法は生体透過性の高い可視から近赤外の波長領域での後方散乱光の空間分解計測を基礎としている。計測対象の一つとしている前腕部静脈・毛細血管の数値モデルに対する網羅的なモンテカルロ・シミュレーションにより、静脈と周囲媒質の光学定数の分離抽出法の検討を行った。さらに、実験検証のため計測装置の設計・試作および計測モデルファントムの作成を行った。これらの結果を下記3点にまとめる。 ・これまで、血管以外の周囲媒質の光学特性の変動にも無依存な推定法により注力していたが、そのままでは推定精度の向上が難しいことが分かった。そのため、周囲媒質の光学特性の事前または同時計測により推定パラメータを追加し、推定法を改善した。その結果、推定精度の向上が見込めることが明らかとなった。 ・計測装置の設計と試作と性能評価用モデルファントムの作製を行った。計測装置の試作において、深さ1~3mm程度の血管計測に適するようLEDとPD(Photo Diode)アレイの距離を密接するように設定し、実機を試作した。また、散乱剤・吸収剤を含むシリコン血管周囲モデルファントムと中性脂肪含有モデル血液を準備した。さらに、計測試作機とモデルファントムを用いた初期テストを実施した。 ・スペックル計測法の応用のため、当初の目的を前倒し計測系を作成することで基礎的なスペックル計測を可能とし、脂質濃度とスペックル変動の関係を検討する事前準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時のロードマップでは、2023年度は「I.数値シミュレーションによる静脈・周囲媒質の光学特性の分離法の検討」の全期と「II.I. 計測装置の設計と試作加」の半期に相当するが、シミレーションにはまだ引き続き進める必要性を残しているが、それ以外は順調であった。さらに「IV.II. スペックル信号」について一部前倒しできたため、全体としては概ね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、申請時のロードマップに沿って行う。詳細は以下の通りである。 II.I. 計測装置の設計と試作:現在研究実績の概要で述べた結果を基に開発・試作を進める。主に、計測データの迅速な処理できるソフトウェアの開発を中心に進める。 II.II. 試作機の評価:モデルファントムの計測を実施し、血管径・深さ、周囲媒質の光学特性、脂質濃度を変化させ、前年度シミュレーションの結果との比較検討を進める。そのうえで、実験的な脂質濃度推定の検証を進める。 III. ヒトを対象とした臨床試験による評価:試作機での臨床データ取得のため、現在簡易テストとして行っている摂食前後の簡易テストを正式な脂肪負荷試験として検討を進めていく。 IV.光電式脈波計測及びスペックル計測の応用:この項目は2025年度の予定であるが、IV.I. 光電式容積脈波の初期検討とIV.II. スペックル信号取得の初期検討を前倒しで進めたい。特にスペックル計測について光電式脈波計測のような皮膚接触型の装置の検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の使用額も申請時より下回った理由は、オンライン会議等普及のため旅費をほとんど使用しなかったことと、コストの観点から物品費の効率的な利用ができたためある。今年度以降は、実験関係の研究を重点化するため、申請時に比べ計測用PCやファントム用薬品等の実験用物品に重きを置いて執行する予定である。
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