研究課題/領域番号 |
23K11870
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 あゆみ 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (40794053)
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研究分担者 |
松井 功 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (60456986)
井上 和則 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10631301)
猪阪 善隆 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00379166)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 人工知能 / 腎病理 / 超解像度顕微鏡 |
研究実績の概要 |
本研究では、腎生検プレパラートのデジタル画像診断にArtificial Intelligence (AI)を応用し、これまで診断医の裁量に依るところが大きかった腎生検画像診断の定量化を行う。さらに、画像に内在する疾患の特徴量をAIを用いて抽出し、腎疾患の個別化医療に資するモデルの構築を行う。 高性能なAIモデルの構築には良質な学習データおよび教師ラベルが欠かせない。さらに腎生検病理画像においては、施設間で染色プロトコルや切片厚などのバリエーションが多く、これら様々なバリエーションを学習データに含めることが望ましい。このため、我々はすでに構築した腎生検画像データセットを拡充し、約6000例のデータセットとした。 腎生検組織には、腎臓を構成する糸球体、尿細管、間質、血管など様々な構造が存在し、疾患によりそれぞれの構造に非常に多様な病変が生じうる。糸球体に限っても、メサンギウム病変、係蹄基底膜病変、係蹄内病変、ボウマン嚢病変、血管極の血管病変等、それぞれの箇所に多彩な変化が認められる。腎生検病理診断においては糸球体の変化を正確に捉えることが必須であるため、まずは腎生検サンプル全体から糸球体領域を正確に検出するモデルの構築を行った。本検討では、少数の施設からのデータで学習したモデルは他施設データでの性能が非常に低下することが判明したため、多施設のデータを学習させたモデルを構築し、性能の向上を図っている。学習する施設およびデータの増加により、性能の向上を認めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的の達成の基礎となる糸球体領域の検出モデル構築において、少数の施設のデータを学習したモデルの性能は汎化能に問題がある事が判明したため、より高精度に判別するモデルの構築のため、学習データを大幅に増加し、学習を行っているため。
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今後の研究の推進方策 |
糸球体には様々な種類・程度の病変が生じ得るが、どのような糸球体であっても高精度に糸球体領域のみを検出するモデルの構築を行い、本成果の報告を行う予定である。その後、本モデルを用いて検出した糸球体切り出し画像に教師ラベルを付与して学習を行い、疾患の特徴量を内包する画像を抽出し、さらにその画像のどの部分に特徴量が存在するかをLocal Interpretable Model-agnostic Explanations(LIME)によってピクセルレベルで特定する。特定された特徴量と、我々がすでに有している31例の腎生検サンプルの超解像度顕微鏡画像所見とを突合する。これにより、AIの捉えた特徴量を、「ヒトの眼では捉えきれない解像度の病変」として脱ブラックボックス化することが可能となる。本解析により、腎生検を行った各個人の組織内に存在する多様な疾患の寄与の程度を可視化、定量化する。
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