研究課題/領域番号 |
23K11916
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
宇野 和行 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (20550768)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | CO2レーザー / レーザーパルス形状 / レーザービーム形状 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,CO2レーザーにおけるレーザーパラメータであるレーザーパルス形状とレーザービーム形状を制御し,照射条件である1パルスあたりのフルエンス(照射エネルギー密度)と照射ビーム径,繰り返し周波数,切削加工では照射パルス数,切断加工では走査速度を調整しながら,軟組織(ハムや豚肉,鶏肉)に照射し,その加工形状と炭化について調査する. 令和5年度は,CO2レーザーのレーザーパルス形状とレーザービーム形状の制御・調整方法の確立とそのときの1パルスあたりのフルエンスと照射ビーム径の調整を実施した.従来のCO2レーザーでは必要不可欠のHeガスを使用せずに,2種類のレーザーパルス形状と4種類のレーザービーム形状の組み合わせを実現した.具体的には,①尖頭パルス幅200 ns,テール長40 μs,尖頭パルスに対するテールのエネルギー比1:35のテール付き短パルスと②尖頭パルス幅200 ns,テール長40 μs,尖頭パルスに対するテールのエネルギー比1:90のテール付き短パルスにおいて,(a)10%/90%ビーム径比50%のドーナツビームと(b)10%/90%ビーム径比70%のドーナツビーム,(c)10%/90%ビーム径比50%のフラットトップビーム,(d)10%/90%ビーム径比70%のフラットトップビームが生成可能となった.8種類のレーザーパルス・ビームにおいて,照射径500 μmにおいて1パルスあたりのフルエンス15 J/cm2を達成した.照射径と1パルスあたりのフルエンスは加工実験において十分な値である.15 J/cm2以下の調整は,減衰器の使用やアウトフォーカス照射により実現可能である. また,令和5年度は,皮膚におけるレーザー照射による温度分布の計算を熱伝導・熱拡散を用いて検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
軟組織照射における熱影響に差が生じると考えられる複数のレーザーパルス形状とレーザービーム形状の制御・調整方法を確立し,所望の1パルスあたりのフルエンスに到達した.しかし,軟組織照射において熱影響が小さいであろうと考えられるパルス幅100 nsのテールフリー短パルスで形状比90%以上のビームの高フルエンスの生成がまだ達成していない.これは今後の課題であるが,解決方法の検討は済んでおり,令和6年度の照射実験と同時に実施可能である. 皮膚におけるレーザー照射による温度分布の計算は,当初予定していなかったが,実施した.まだ検討すべき部分があり,令和6年度も引き続き実施する.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度に生成した複数のレーザーパルス形状と複数のレーザービーム形状の組み合わせによる複数のレーザーパラメータを用いて,軟組織への照射実験を実施する. ①表面形状が比較的平らなハムをサンプルとして,複数のレーザーパラメータを用いて,1パルスあたりのフルエンスと照射ビーム径,繰り返し周波数,切削加工では照射パルス数,切断加工では走査速度に依存する加工形状と炭化について調査する. ②①の結果から照射条件を検討し,サンプルの水分含有量に依存する加工形状と炭化について調査する. ③①と②の結果から熱影響がない,あるいは熱影響が小さなレーザーパラメータと照射条件について検討する. 以上の実験・研究の後,時間に余裕があれば,③で検討した条件の生成・調整やサンプルに豚肉や鶏肉を用いた照射実験を実施する. また,皮膚におけるレーザー照射による温度分布の計算を引き続き検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
CO2レーザー装置の新規作成または大幅な改修が必要なく,既存のCO2レーザー装置の改良により,照射実験に必要なレーザーパルス・ビームの生成が実現できたため,少し予算を節約することができた. 予備実験では,レーザー照射によるデブリがレンズに到達しレンズの汚染の原因となった.この部分の改善が必要であり,今後予算が必要となる.令和5年度の残額は,レンズなどの照射光学系の部品に使用する.
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