フランクフルトのドイツ国立図書館(DNB)にて、1920年代から1930年代の資本主義関係の文献を実見調査した。ドイツの資本主義関連文献にはマルクス主義や共産主義だけではなく国家社会主義やキリスト教史をも射程に入れたものが多いことを確認できた。 ハイデルベルク大学文書館にて、1920年代にハイデルベルク大学に留学した日本人研究者の留学関係書類およびリッカート、ヴィンデルバント、ヤスパース、レーヴィットらに関する公文書を収集した。 マールブルク大学文書館にて、1900年前後の哲学部の書類を実見・調査した。ナトルプやコーヘンが学位審査した書類のほか、自然科学や数学の学部設立に関する書類を収集した。これらは、新カント派のマールブルク学派が数学を重視していた経緯を傍証する資料である。また、マールブルク大学図書館にて、哲学・社会経済史・近代史の開架を調査した。社会経済史の分野では、ウェーバー、ブローデル、ユルゲン・コッカの著作やゾンバルトのプロレタリアート論および社会主義論の著作が多く配架されていた。また、マルクスの著作は哲学だけではなく社会経済史・近代史の書架にも配架されており、重要文献については重複をいとわず所蔵していることを確認できた。 2023年度の調査により、1920年代の資本主義を研究するにあたって参照軸とすべき文献の候補を選定することができた。また、ドイツにおける国家社会主義やキリスト教史に関する知識が不可欠であることを認識するに至った。2023年度の調査は予備的なものであり、今後の調査は研究の進展を踏まえて焦点を絞って行いたい。 今後の研究の方向性としては、日本の資本主義については日本資本主義発達史講座の再検討を行い、ドイツの資本主義については基礎文献の読み込みを進める。また、新カント派に依拠する社会主義について日独の研究を比較する。
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