• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

中世絵巻の「闇」の表現史―絵と詞書の相関性の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K12057
研究機関四国大学

研究代表者

石井 悠加  四国大学, 文学部, 講師 (10881518)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
キーワード中世絵巻 / 夜・闇 / 詞書 / 照明 / 火 / 平治物語絵巻 / 石山寺縁起絵巻 / 西行物語
研究実績の概要

本研究は、古典文学の研究領域での関心が近年高まりつつある「闇」「夜」というテーマを中心として、中世各期の絵巻作品群におけるテキストとイメージの表現の相関性について追究し、その翻案・受容の様態の特徴を新たに浮かび上がらせるものである。
中世日本の絵巻には、「闇」「夜」の描写技法を得た形跡が乏しい。その理由として、①作品が鑑賞される時間帯そのものが主に夜間であり、照明具の下で披見するものであったこと、②絵巻制作の目的が作品世界の図示であり、そのため詳細が俯瞰できる必要があったこと、③「詞書」というテキストによる語り=「絵解き」と併せて鑑賞される絵画であったことなどが挙げられる。こうした描かれなかった「闇」と「夜」という視点から、絵と文章の共同作業の技法を再検討することにより、従来の絵巻表現史の研究の視点では得られなかった新知見を得ることを目標としている。
その目的達成のための研究計画として、(1)全体像の把握(絵巻研究のプラットフォーム構築)と、(2)個別の作品のサンプルリサーチの2点を予定していた。(1)については、12~14世紀の主要な絵巻作品の中から、詞書に時間帯を示す語彙が含まれる場面の抽出と、明暗を示すモチーフの収集・整理を行い、索引を制作した上で場面分析を行う。(2)については、『平治物語絵巻』『石山寺縁起絵巻』をサンプルとして個別事例の検証を行う予定であった。
初年度はこれらの研究計画を進める基盤を作るため、まず必要な文献の整理に加えて、オンラインデータベースを契約して調査に着手した。またその過程で、出版社によるオンラインイベントにおいて『平治物語絵巻』中の夜の闇の非描写について発表することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は申請当初、所要年数を5年間として見込んでいた。(1)全体像の把握(絵巻研究のプラットフォーム構築)については、(2)個別の作品のサンプルリサーチと並行して進めていく予定であるが、まだ完成版の提示には時間をかけていきたい。ただし進行を遅らせる要素は今のところなく、おおむね順調に進展している。
(2)個別の作品のサンプルリサーチについては、まず『平治物語絵巻』三条殿夜討の巻の夜の闇の非描写への検討を加えられた。これは2023年11月10日実施の図書館総合展2023年度フォーラム「文献調査が変わる!研究者が極意を伝授『ジャパンナレッジ版 史料纂集・群書類従』」(https://japanknowledge.com/event/report/20231110.html)の中で言及している。夜の時間帯を舞台とした絵巻の例は多いが、『平治物語絵巻』の例のようにそれらは大型の火災の描写を伴う場合も多い。このことについて、ジャパンナレッジ版史料纂集・群書類従の検索機能などを活用し、実際の中古・中世の古記録類における「夜」の記録の傾向も分析することで、理解を深めることができた。
そのほか、『西行物語絵巻』諸本の画中における夜空の月の描写の有無が、複雑な諸系統の詞書テキストを比較する上で重要になるのではないかという見通しを現在新たに得ている。『西行物語絵巻』の物語中には実際の西行の月の和歌が多く取り込まれている。詞書と絵画の関係について、描かれ、詠まれた「月」に注目して分析を進めていきたい。

今後の研究の推進方策

引き続き(1)全体像の把握(絵巻研究のプラットフォーム構築)と、(2)個別の作品のサンプルリサーチについて、データベースも活用しながら研究計画を進めていく。『平治物語絵巻』三条殿夜討の巻について成稿するほか、『西行物語絵巻』諸本の「月」の描写については、研究成果の発表先として、2024年8月の西行学会大会を希望している。その成果は学会誌へ投稿する予定である。

次年度使用額が生じた理由

2023年度の支出はデータベース購入・契約費用が大半となった。その他としては図書購入費に予算を充てている。しかし研究対象とする作品の高画質写真を収録した図書が2024年度中に順次刊行される予定であることが分かり、これが高額となることから、その購入に向けて未使用額を次年度に送ることとなった。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] ジャパンナレッジ版 史料纂集・群書類従~デジタル時代の古典文学研究のヒント集~2023

    • 著者名/発表者名
      石井悠加
    • 学会等名
      図書館総合展 2023年度フォーラム
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi