研究課題/領域番号 |
23K12092
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
岡島 由佳 日本女子大学, 文学部, 研究員 (20970156)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 日本文学 / 近世怪異小説 / 話型索引 / 仮名草子 / 浮世草子 / 読本 / 夜話 |
研究実績の概要 |
本研究では、近世怪異小説年表と、怪異譚の話型索引を作成し、類話を整理・分析することで作品相互の影響関係を明らかにすることを試みる。具体的な研究内容としては、《Ⅰ近世怪異小説・実際の座の会合を伴った「夜話」「茶話」等の怪異譚の研究》と、《Ⅱ近世怪異小説・怪談と関わりの強い地誌・俳諧の研究》を平行する。 研究初年度は、怪談物仮名草子・浮世草子・読本等の書承の怪異小説を幅広く調査・整理し、「話型索引」の制作を進めた。また、「百物語」形式、「夜話」「茶話」等の座の文芸を作品化した怪異小説の調査・整理も着手した。なかでも、『御伽人形』(宝永2年〈1705〉刊)を例に、「御伽」と「御伽衆」、「夜話」(『甲陽軍艦』に記された夜話や、鳥取県立図書館所蔵本『因府夜話』等)との関わりについて調査し、これまで典拠不明だった話の典拠を明らかにするとともに、「ハナシ」の素材をとおして『御伽人形』が書かれた文学的意義についても考察した。書承と口承を文芸化した怪談書の類話を比較検討し、話の伝播と変容について分析した論文を発表した(『御伽人形』の創作手法――典拠との関わりをとおして」『青山語文』第54号、2024年3月)。 さらに、国文学研究資料館の国書データベースを利用し、「怪談」「奇談」「夜話(夜噺・夜咄)等のキーワードを含む書名を検索して内容を確認し、仮名草子・浮世草子・読本等の怪談書と、近世の夜話、茶話の談話習俗に根ざした一連の怪談書の調査・整理・分類をしながら「近世怪異小説年表」の作成を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国文学研究資料館の国書データベースを主に利用し、「怪談」「奇談」「夜話」「夜噺」「夜咄」等のキーワードを含む書名を検索して内容を確認し、当初の予定通り、書承と口承の怪談書を調査・整理しながら「近世怪異小説年表」作成のためのデータ収集はできているが、想定よりも夜話、茶話に関する未翻刻資料の調査・分析にやや時間がかかっている。これは、国書データベースに掲載のない「夜話」に関する資料を見いだしたこととも関係する。これに関しては、「夜話」について新たな知見を得たため、翻刻して、論文化する予定にある。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に調査に行く予定であった九州大学図書館を次年度にし、そのほか次年度予定の諸本調査を引き続き継続する。 今後の研究は、主に地誌に記された夜話等の怪異譚を取り入れた作品を調査する。初年度は、画像データベース、マイクロフィルムを中心に書承・口承の怪談書からデータ収集を行ったが、そのデータと、次年度に調査する地誌のなかの怪異譚を比較して、共通点や相違点を整理し、話の伝播と変容を辿っていく予定でいる。さらに、それらを分析し、話型索引の作業を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、閲覧可能な画像データベースや、近隣の図書館所蔵本のマイクロフィルムを中心に調査し、データ収集に想定よりやや時間がかかったため、調査に行く予定であった遠方の九州大学図書館所蔵本の調査を次年度にまわした。今年度、調査予定の京都大学図書館や大阪中之島図書館等、数多くの諸本を確認する必要がある。そのため、前年度の研究費を次年度に繰り越すこととした。 夜話、茶話に関する文献は約600点ある。書名を手がかりに文献を調査し、各作品の内容を分析するが、「夜話」「茶話」は、未翻刻の文献が多く、内容を確認する必要がある。文献は原物確認のみで、複写不可もある。また、マイクロ資料でのみ閲覧可能な文献もある。旅費や複写等、多くの費用に充てる予定でいる。
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