研究課題/領域番号 |
23K12143
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
安野 直 早稲田大学, 文学学術院, 講師(任期付) (10866958)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ロシア文学 / 性感染症 / セクシュアリティ |
研究実績の概要 |
本研究は、梅毒やエイズといった性感染症がロシア文学の作品のなかでどのように表象されているのかを明らかにすることを目的としている。性感染症は、性労働者やセクシュアル・マイノリティといった、特定のマイノリティ集団に関するステレオタイプを再生産し、差別や偏見を助長するスティグマ的機能を有していた。それゆえ、本研究を通して性感染症の意味付けを批判的に問うことは、周縁化されたセクシュアリティを生きる人々の文化的表象を明らかにするうえで必要不可欠なものとなる。 ロシアでは、2013年の「同性愛宣伝禁止法」の制定およびその改正、2さらには2020年の憲法改正、2023年のトランスジェンダーを対象としたいわゆる「性別変更禁止法」によって、セクシュアル・マイノリティの人権が脅かされつつある。それゆえ、性感染症を通して非規範的なジェンダーやセクシュアリティのあり方を問う本研究は、ロシアにおける性的少数者への人権侵害にたいして人文学の領域からアプローチするものである。 本研究は、具体的には、①19世紀頃の梅毒をめぐる医学的言説の調査、②文学作品・雑誌にあらわれる性感染症の言説の精査、③クィア・スタディーズやセクシュアリティ研究を精査することによる理論的枠組みの構築、という三方向から研究を進める。研究は文献調査を中心に進めるが、状況が許せば質的調査を組み合わせていきたい。これらを組み合わせ、研究課題遂行後には書籍として研究成果の出版を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、①19世紀頃の梅毒をめぐる医学的言説の調査および、③クィア・スタディーズやセクシュアリティ研究を精査することによる理論的枠組みの構築を進めることを当初の計画していた。しかしながら、ロシアにおけるセクシュアル・マイノリティをめぐる動向として、いわゆる「性別変更禁止法」の成立など、本研究遂行にあたって重要と考えられる現代的動向を追うことを優先させる結果となった。今後研究計画を再検討し、本研究課題の完遂に尽力したい。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、①19世紀頃の梅毒をめぐる医学的言説の調査を中心におこなう。ロシアへの渡航が厳しい状況であることから、日本国内の大学図書館に所蔵されている資料やインターネットに公表されている資料を中心に分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実施予定であった研究出張をおこなう予定であった研究出張が実施できなかったため。本年度実施する予定である。
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