研究課題/領域番号 |
23K12144
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
松浦 菜美子 関西学院大学, 文学部, 准教授 (10880247)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2029-03-31
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キーワード | 叙事詩 / ユゴー / ジャンル詩学 |
研究実績の概要 |
令和5年度は産前・産後休暇及び育児休業の取得により7月30日より本研究課題を中断した。 令和5年度は研究課題の初年度であったため、研究を中断する前の4月から7月までは研究備品を揃えるとともに研究課題の中心となるユゴー『諸世紀の伝説』や彼の理論的テクスト(『クロムウェル』の「序文」、『ウィリアム・シェイクスピア』など)の日本から入手可能なエディションを網羅的に収集した。 それに並行して、ユゴー『クロムウェル』の「序文」を精読し、ユゴーのジャンル詩学を理解する作業を可能な限り進めた。そのさい、西欧文学におけるジャンル詩学の変容(とりわけ叙事詩/抒情詩/劇詩の三幅対の成立とドグマ化)を跡づけたジュネット『アルシテクスト序説』を踏まえながら、ドイツ・ロマン主義の直接的・間接的影響下でユゴーのジャンル詩学が形成されたこと、その一方で独自の歴史観のなかにそれが起きなおされていることを確認した。さらに詩における「物語性の排除」という主にマラルメの詩学を通してヴァレリーへと引き継がれた「純粋詩」の理念とジャンル体系の変革という文脈をドミニク・コンブ『ポエジーとレシ』を通して整理した。こうした作業は叙事詩をめぐるユゴーの理念・実践と19世紀後半のフランスにおける詩ジャンル体系の大きな変容の流れに位置づけ考察するための基盤となる基礎的作業である。研究課題の再開後はジャンル詩学の歴史的・理論的知見を一つの重要な枠組みとしつつ、たほうで、ユゴーの置かれた、より具体的な歴史的文脈を把握しながらユゴーの他の理論的テクストの読解を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出産・育児にともない令和5年度は7月30日から研究課題を中断するという研究計画外のことがあったものの、令和5年度の7月までに進める予定だった作業はすべて実施することができた。すなわち研究課題を進めるための物理的な環境整備、ユゴーの一次資料の収集、ユゴーのジャンル詩学の解明に向けたテクスト分析である。育児休業からの復帰後に計画に沿って研究を再開できるところまで、作業と考察を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は年度途中に研究を再開し、令和5年度の8月から3月末までに実施する計画だった研究を進めていく。具体的にはユゴーの一次資料ならびに基礎研究の読解からユゴーのジャンル詩学と『諸世紀の伝説』連作の背景にある執筆動機・意図を解明することを目指す。研究中断により実施できなかったフランスでの資料収集は令和6年度の2月から3月に行う。なお今後は基本的に年度ごとの研究実施計画をおおむね一年ずつずらして実施していく。従って令和6年度は令和5年度の、令和7年度は令和6年度の研究実施計画をもとに資料の収集・読解と成果の公表を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度7月30日から産前・産後休暇及び育児休業の取得のため研究を中断したことにより、それ以降に支出予定だった直接経費が次年度使用額となった。その具体的な内訳は国内学会等の出張ならびに資料収集のための海外出張に充てる予定だった旅費と資料収集の際に必要なコピー代等の経費、消耗図書費の一部である。 今後は基本的に年度ごとの研究実施計画をおおむね一年ずつずらして実施していくため、令和6年度は令和5年度8月以降に支出予定だった上述の用途に次年度使用額を充てる。 したがって、令和6年度分として請求した助成金は令和7年度に令和6年度の計画を実施する際に使用する予定である。ただし、令和6年度の助成金のうち物品費として計上した消耗図書費やその他に計上したコピー代は、令和6年度に実施する予定だった資料収集に実際に着手できた場合使用する。
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