研究課題/領域番号 |
23K12171
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
冨岡 裕 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 特別研究員(PD) (90816505)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 社会言語学 / 消滅危機言語 / 琉球沖永良部語 / 言語復興 / 言語継承 / アクションリサーチ |
研究実績の概要 |
当該年度は主に次の活動を行った。 (1)琉球沖永良部語話者が実践している言語復興、言語継承に係る活動への参与観察、(2)同活動の企画・運営への協力、(3)沖永良部島の言語・文化の独自性や、日本国内の言語・文化の多様性に対する気づきを若年層に促す活動、(4)(3)の効果をより高めることを目的とした、海外(タイ東北地方)の多言語地域との国際交流活動の企画と実践、(5)沖永良部島とタイの少数言語コミュニティとのネットワーク構築のため、タイ視察の企画と実践、(6)これまでの活動成果の学会等での発信、である。 特に本研究課題では、これまでの研究活動で蓄積されてきた(1)、(2)、(3)の成果をもとに引き続き(1)、(2)、(3)を行うとともに、活動の発展と深化を目指し、(4)、(5)、(6)も行った。 これらの活動を通じ、沖永良部島とタイの多言語地域、少数言語話者コミュニティを結び、特に前者のエンパワーメントに貢献した。さらに、これらの活動に携わったことで、少数言 語コミュニティと研究者の双方に、話者(当事者)と研究者の協働に関する経験と知見がもたらされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、沖永良部島内での参与観察だけでなく、琉球沖永良部語話者が地域外で行う活動にも同行し、参与観察を行うことができた。また、他の多言語地域、少数言語コミュニティの視察や、研究成果の発信など、研究者だからこそ提供できるリソースや機会を地域の人々に提供することができた。それらの経験を通じて、研究者の適切な地域への関わり方について、研究者間の内省にとどまらず、地域の人々とも意見を交換しあうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き沖永良部島内外で行われている琉球沖永良部語の言語復興、言語継承の活動に関わり、参与観察を行っていく。また、当該年度に築いた島外(特にタイ)の少数言語コミュニティとのネットワーク作りや信頼関係の深化にも協働を通じて協力していく。そのために、今度はタイから人材を招聘し、沖永良部島での経験や知見をタイ側に発信する機会も設ける。本研究課題で取り組んでいる、少数言語に関する研究、当事者と研究者の協働に基づく活動が、日本とタイの学術分野の双方、当事者と研究者の双方にとって有益となることを目指す。 中長期的には、琉球沖永良部語話者らとの研究活動で得た経験と知見を、他地域、例えば本研究課題が計画段階で研究対象地域に想定していたタイ東北地方からラオスにまたがる少数言語コミュニティにも応用していきたい。そのために、本研究課題の遂行期間中に、当該コミュニティを訪問し、意見交換や中長期的構想の共有を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査や学会発表で国内外に渡航した際、本研究課題と関連する別の競争的資金等から行った支出があったため、残額が生じた。 翌年度分については、使用目的が本研究課題に最も近い支出については、本研究課題から優先的に支出すると同時に、他の研究助成費とのバランスも考慮して使用していく。
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