研究課題/領域番号 |
23K12239
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
姚 一佳 上智大学, 言語科学研究科, 研究員 (20962989)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | 暗示的学習 / 複合動詞 / 統計学習 / タイプ頻度 / 意味処理 / 形式処理 / 一括処理 / 分解処理 |
研究実績の概要 |
暗示的学習の生起メカニズムに関する有力な考えに統計学習説があり、一般的には、学習項目の呈示頻度(=タイプ頻度)が高ければ高いほど、構造に関する知識が習得されやすくなるとされている。本研究では、この点について議論すべく、呈示された刺激情報に対する学習者の受け止め方(=情報処理方式)に着目し、それがいかに呈示頻度と学習効果との関連性に影響を及ぼすかについて実証的に検討する。検討にあたっては、日本語複合動詞(例:食べ歩く)を目標言語項目にし、中国語を母語とする中級日本語学習者を対象とした。本研究の構成は次のとおりである。①タイプ頻度統制条件下における意味的処理への誘導の有無による影響を解明する、②タイプ頻度操作条件下における意味的処理への誘導の有無による影響を解明する、③タイプ頻度統制条件下における分解処理への誘導の有無による影響を解明する、④タイプ頻度操作条件下における分解処理への誘導の有無による影響を解明する。 本研究では、規定要因と媒介要因の2つの観点から暗示的学習の効果を捉える。このことより、暗示的学習の効果の生起メカニズムを包括的に解明することが可能になる。第二言語習得における暗示的学習のメカニズムの解明は人間の学習メカニズムの解明につながる。また、暗示的学習の教育現場への応用が期待されているが、実際の事例をみると、教師は学習材料の効果を十分に把握できず、たぶん効果があるだろうと予測し、選択していることが多い。本研究では、暗示的学習の効果に関連する各要因の役割と要因間の交互作用を実証的に解明し、モデル化する。暗示的学習の効果を精度よく予測可能なモデルが構築できれば、学習材料の効率特性を見極めた上で教材や学習支援システムの開発が可能となり、暗示的学習の外国語教育現場へ活用する後押しになる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
四つの学習実験に使用する学習課題とテスト課題の作成がすでに完了した。また、実験計画および実験材料に対する倫理審査が通った。ただし、倫理審査が終わった時点で学校の休み期間に入ったため、実験参加者の募集には時間がかかった。その関係で、前年度は実験の実施までには至らなかった。本年度より、学習実験をまとめて実施する予定である。よって、現段階の進展状況を「おおむね順調に進展している」と自己評価を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度の上半期にはタイプ頻度統制条件下における意味的処理への誘導の有無による影響を解明する学習実験を行う。2024年度の下半期にはタイプ頻度操作条件下における意味的処理への誘導の有無による影響を解明する学習実験を行う。2025年度にはタイプ頻度統制条件下における分解処理への誘導の有無による影響を解明する学習実験を行う。2026年度にはタイプ頻度操作条件下における分解処理への誘導の有無による影響を解明する学習実験を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
参加者募集に時間がかかっため、2023年度に実施予定であった「タイプ頻度統制条件下における意味的処理への誘導の有無による影響を解明する学習実験」は実施には至らなかった。その結果、次年度使用額が生じた。2024年度の上半期に、中級日本語学習者90人を対象に、事前テスト、処遇、直後テストおよび遅延テストの四つのセッションからなる「タイプ頻度統制条件下における意味的処理への誘導の有無による影響を解明する学習実験」を実施する予定である。次年度使用額は参加者への謝礼金として使用する。
|