研究課題/領域番号 |
23K12295
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
新見 まどか 甲南大学, 文学部, 講師 (40759958)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 中国史 / 五代十国 / 国際関係 / 国書 / 後周 / 南唐 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、五代十国期における各国の国際関係を、当時実際にやり取りされた外交関連文書(国書や使者の手紙、辺境官府間の文書等)を利用して解明することである。研究開始の1年目にあたる本年度は、史料の収集と整理、読解を集中的に行う予定であった。 そのため、まずは五代十国期の様々な文章類を網羅的に収録している『全唐文』を用いて当時の国書類の総体を把握し、「中華経典古籍庫」等の漢籍検索データベースを利用してそれらの国書の出典を明らかにした。そして、本研究に必要な史料が主として『冊府元亀』に収録されていること、これ以外に『旧五代史』『資治通鑑』『陸氏南唐書』『錦里耆旧伝』等にも関連史料が収録されていることを確認した。 続けて、見つけた史料の字句の校訂を行った。同じ『冊府元亀』でも、宋版と明版では字句が異なっており、また同じ詔勅も『旧五代史』と『陸氏南唐書』等で表現や文章が異なる場合がある。ゆえに、それらを全て対照したうえで、最も適切と思われるテキストを作成した。 さらに、これらを編年順に並べた上で内容別に整理し、いくつかのグループを作成した。この内、本年度最も集中的に分析したのは、後周と南唐の間でやり取りされた国書である。これらについては、文書の冒頭書式が残っているものが7件、本文の内容が残っているものが15件あった。しかし、これまで先行研究ではその総体を把握したうえでの分析がなされていなかった。ゆえに、本年度はその史料の分析を行った。その成果は、8月に中国での国際学会で発表したうえで論文にまとめており、来年度中に査読誌への掲載が予定されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分析に耐えるまとまった史料を見つけることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
史料を見ていく中で、五代と十国の関係だけでなく、十国相互の国際関係も理解する必要があると感じた。この点について、各政権間でやり取りされた国書等はほとんど残っていないが、婚姻関係については比較的多くの史料があることが、今年度の作業で明らかになった。ゆえに今後は、そちらの史料を整理し、十国側の国際関係を動かした要素を解明することで、研究のより一層の深化を図り、五代十国期の国際関係に対する実像解明という、本研究の根本課題への足掛かりとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
中国での現地調査を、相手研究機関の研究者との調整により予定より短くしたため、繰り越しが生じた。次年度以降にこの研究費を用い、より長期間の現地調査を実施する予定である。
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