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2023 年度 実施状況報告書

イラン南部ペルシャ湾沿岸地域における都市化プロセス

研究課題

研究課題/領域番号 23K12307
研究機関東京大学

研究代表者

三木 健裕  東京大学, 総合研究博物館, 特任助教 (30898309)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード絡まり合い / イラン南部 / 銅石器時代 / 考古学理論 / 土器 / 新石器時代 / イラク・クルディスタン
研究実績の概要

本研究の主題であるイラン南部、ブーシェフル州の銅石器時代遺跡トレ・スゾの発掘調査にむけては、周辺の同時代遺跡の文献収集を行った。本研究の副題である都市化プロセス解釈のための理論深化に関しては、2023年9月、英国の考古学者イアン・ホッダー氏がエンタングルメント理論を提唱した著作の翻訳書『絡まり合うモノと人間:関係性の考古学にむけて』を、同成社より刊行した。訳書中では訳者改題を付加し、現在の考古学理論における本書の位置付けを行った。2023年度内に初版の出版社在庫がなくなったため、2024年3月にオンデマンド版を刊行した。2024年2月には講演会を行い、出版した書籍に関して研究者と議論した。こうした作業を通じて、今回採用するエンタングルメント理論の強みと課題を確認することができた。
当初予定していた2023年度中のトレ・スゾ遺跡発掘調査は、政治的理由により延期となった。しかしイランでの発掘調査が引き続き政情不安のため行えない事態に備えて、2023年8月から9月にかけて、イラク・クルディスタン地域にてシャカル・テペ遺跡の発掘調査に参加した。幸いなことにシャカル・テペ遺跡では、イランでの対象時期と同一の銅石器時代の文化層を調査する機会に恵まれた。2024年2月に再度イラク・クルディスタンに渡航し、シャカル・テペ出土土器資料の整理と分析を実施した。政情不安により調査地をイラクへ変更した場合の予備的な成果を得ることができた。
また勤務先である東京大学総合研究博物館にて、イラン南部の新石器時代遺跡タル・イ・ジャリB遺跡出土土器資料の整理作業を進めた。残存状態の良好な土器資料の3Dモデル作成を行い、都市化以前における文様割付の変化と当該期の土器づくり共同体の変化の相関を論じた。政情不安により中東へ現地調査できない場合の予備的な成果を得ることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度が3年計画の初年度である。本年度最大の成果は、エンタングルメント理論を検討・アップデートする上で核となる書物の翻訳書『絡まり合うモノと人間:関係性の考古学にむけて』(同成社)を出版した点である。当初の計画通りに出版できただけでなく、日本の考古学界の注目を集め、オンデマンド版の増刷という予想以上の成果にいたった。しかし本年度予定していたイラン南部、トレ・スゾ遺跡の発掘調査は政治的理由により実施できなかった。また昨今のイスラエルとイランの間の緊張関係により、今後のイラン南部での発掘調査の実現可能性も不透明となってしまった。中東発掘調査において常に発生する上記の問題に関しては、イラク・クルディスタンでの銅石器時代遺跡シャカル・テペの発掘調査参加と資料調査の実施により、調査地変更のための予備的な成果を得た。また東京大学総合研究博物館にてイラン南部新石器時代遺跡タル・イ・ジャリBから出土した土器資料の整理を実施し、本研究主題の隣接時期へ対象時期の範囲を拡大するというかたちで、現地調査に代替する成果を得るとともに、国内学会や講演会で成果を発信した。

今後の研究の推進方策

次年度は3年計画の2年目にあたる。イラン南部、トレ・スゾ遺跡の発掘調査に関しては、変転する中東情勢を注視しつつ、2025年3月に発掘調査を実施できるよう尽力する。本研究実施期間中にイランにて発掘調査ができない事態に備えて、2024年8月に引き続きイラク・クルディスタンでの遺跡発掘調査に参加し、調査地変更のための予備的成果を得る。出土資料の調査に関しても、イラン南部で発掘調査を実施できない間は、イラク・クルディスタンでの遺跡発掘調査から出土した土器資料を中心に各種の分析をすすめていく。東京大学総合研究博物館にてイラン南部新石器時代遺跡から出土した土器コレクションの整理・学際的研究も引き続き進め、新石器時代から銅石器時代まで長期間にまたがる都市化に向けてのプロセスを考察する。エンタングルメント理論の深化とアップデートに関しては、2023年8月に翻訳した書籍の第2版が出版され、内容が大きく改訂された。その変更点を吟味し、本研究のためのアップデートのために何が必要か検討する。あわせて国内学会、国際学会での成果発信に努める。

次年度使用額が生じた理由

昨年度支出予定であったイランでの発掘調査にかかる旅費・人件費を支出せずに終わったため。本年度ないし翌年度の発掘調査に使用する予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] イラン南部新石器時代彩文土器の文様割付に関する研究2024

    • 著者名/発表者名
      三木健裕
    • 雑誌名

      西アジア考古学

      巻: 25 ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 2022年の歴史学界-回顧と展望-西アジア・北アフリカ(古代オリエント)22023

    • 著者名/発表者名
      三木健裕
    • 雑誌名

      史學雑誌

      巻: 132 ページ: 299, 303

  • [学会発表] 時を彩る 先史イラン彩文土器の世界2023

    • 著者名/発表者名
      三木健裕
    • 学会等名
      東京大学総合研究博物館小石川分館 ソトラボ第8回土器トーク
  • [学会発表] A new Ubaid ceramic assemblage in the Shahrizor Plain, Iraqi Kurdistan2023

    • 著者名/発表者名
      Takehiro Miki, Kazuya Shimogama
    • 学会等名
      13th ICAANE (International Congress on the Archaeology of the Ancient Near East)
    • 国際学会
  • [学会発表] イラン南西部ファールス地方新石器時代の土器を再考する:タル・イ・ムシュキ、タル・イ・ジャリB遺跡を中心に2023

    • 著者名/発表者名
      三木健裕
    • 学会等名
      日本西アジア考古学会第28回総会・大会
  • [学会発表] 西アジア銅石器時代・先史イランにおける人間といきものの絡まり合い2023

    • 著者名/発表者名
      三木健裕
    • 学会等名
      【古代オリエント博物館シンポジウム】西アジアのいきものを巡る歴史と文化
    • 招待講演
  • [学会発表] 土器づくりにおける施文工程の詳細な理解にむけて-イラン南部彩文土器の事例から-2023

    • 著者名/発表者名
      三木健裕
    • 学会等名
      中央大学人文科学研究所主催公開講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 絡まり合う世界への道案内:イアン・ホッダー著『絡まり合うモノと人間―関係性の考古学にむけて』訳者解題2023

    • 著者名/発表者名
      三木健裕
    • 学会等名
      金沢大学古代文明・文化資源学研究所ザグロス山麓先史考古学プロジェクト第3回研究会・連続講演
    • 招待講演
  • [図書] 絡まり合うモノと人間 : 関係性の考古学にむけて〈オンデマンド版〉2024

    • 著者名/発表者名
      イアン・ホッダー、三木 健裕
    • 総ページ数
      426
    • 出版者
      同成社
    • ISBN
      9784886219480
  • [図書] What Does This Have to Do With Archaeology?: Essays on the Occasion of the 65th Birthday of Reinhard Bernbeck2023

    • 著者名/発表者名
      TAKEHIRO MIKI
    • 総ページ数
      458
    • 出版者
      Sidestone Press
    • ISBN
      9464261889
  • [図書] 絡まり合うモノと人間 : 関係性の考古学にむけて2023

    • 著者名/発表者名
      イアン・ホッダー、三木 健裕
    • 総ページ数
      426
    • 出版者
      同成社
    • ISBN
      4886219225

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公開日: 2024-12-25  

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