研究課題/領域番号 |
23K12320
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
邱 君ニ 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化遺産国際協力センター, 客員研究員 (20971526)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 協働的な博物館活動 / オランダ / 共有の文化遺産 / 多視点 / 脱植民地化 / 包摂性 / 博物館展示 |
研究実績の概要 |
本研究では、オランダで推進されている「共有の文化遺産」という概念と博物館活動を取り上げ、検証を行ない、博物館における「さまざまな立場を持つ人びと」が協働でき、多様な視点が包摂できる方法論を提示することを目標としている。 初年度にあたる2023年度は、オランダにおける「共有の文化遺産」の概念、政策背景と一連の推進プログラムの変遷を整理した上で、その実態を明らかにするために、オランダ文化遺産庁、アムステルダム国立美術館、アムステルダム博物館、Dutch Center for International Cultural Cooperationを中心に、関係者への聞き取り調査を行った。特に、文化政策により推進された「共有の文化遺産」の概念が、いかに文化遺産をめぐる「さまざまな立場を持つ人びと」が「協働」するに至ったか、どのように博物館活動の助成予算を通じて、博物館現場に推進されているのか、現地調査を行った。 また、オランダで行われた実践の特徴を浮かび上がらせるため、「脱植民地化」が進められているフランスのカルナヴァレ美術館、ケ・ブランリー美術館、ルーヴル美術館、イギリスの大英博物館、Museum of London Docklandsを中心に、博物館の展示調査及び関係者インタビューを行った。博物館における「脱植民地化」という大きな潮流のなかにありながらも、オランダとは異なる実践方法と議論方向がわかった。 現在は、調査で得た知見を往復させながら関係者と議論を続けているが、調査研究の進捗状況に応じて国内外にて成果の口頭公開、研究情報の国際発信を行いつつ、現段階での成果をまとめることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ予定通り調査を遂行できたため、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、引き続きアムステルダム国立美術館、アムステルダム博物館、熱帯博物館(Wereldmuseum Amsterdam)を中心に調査を行う予定である。また、第三者の立場から2024年度の「論争のある歴史認識について語り合う研修」で参与観察を行う。ここでは、研修がどのように多視点の包摂、また協働関係に影響を与えたかについて、異なる立場の関係者に聞き取り調査を行う予定である。研究結果は、引き続き、学会報告・論文等の形で発表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りの使用内容となったが、当初計上していた人件費・謝金は想定より下回った。また、購入した資料が予定より安価だった。そのため生じた分だけ次年度に繰り越すことになった。 次年度以降、研修プログラムにて国外調査を行なうための旅費に使用する予定である。またオランダの博物館活動の実態分析、日本国内外の博物館会議での発表、成果の発信のためのの旅費に使用する予定である。
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